2005年(平成17年)11月10日号

No.305

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安全地帯(126)

信濃 太郎

 「情愛文学大師」の渡辺惇一さん

 作家渡辺惇一さんと話す機会があった(11月7日・赤坂)。いま日本経済新聞に小説「愛の流刑地」を連載中である。「あれはエロだ」だと言われながらも経済人、サラリーマンの間でかなり読まれている。渡辺さんは日本アイスランド協会の会長でもある。今年で協会創立15年を迎えたから付き合いは15年以上にになる。会うたびに興味ある話を聞く。女性のアイデアの素晴らしさや我慢強さなど実例を上げて説明する。「失楽園」の連載が終わった後だと思う。「連載小説は体力だ」といっていた。連載が終わると体重が4、5キロ必ず減る。部屋に閉じこもってあれこれ思案する。体力がなくてはつとまらない仕事だそうだ。先月の日本アイスランド協会の理事会ではこんな話を聞いた。日本と韓国のいずれも50代の主婦5人づつをを集め、職場にいる亭主に「わたしを愛しているか」と電話させ、その反応を確かめる実験をした。日本の男性は5人とも「何を言ってるんだ。ここをどこと思っているんだ」「頭がおかしくなったのではないか」という返事であった。ところが韓国の男性は全員「愛している」と答えたそうだ。あなたならどう答えるか。私は「アイ、ラブ、ユウ」と小声で返事して電話を切る。
 いささか旧聞だが「ニューズウーク」(日本語版10・26号)が「世界が尊敬する日本人」を特集している。その一人として渡辺惇一さんを取り上げていた。中国語に翻訳された「失楽園」が大流行し、特に若者の間に純愛という新たな恋愛意識をもたらし、渡辺さんを「情愛文学大師」と呼ばれる存在だとか。
「愛の流刑地」も日本と中国で同時発売され、新たなブームを巻き起こすかと期待しているらしい。すでに連載の終わったものが翻訳されて出回っているという。なんといっても小説のタイトルがいい。「不倫」という「純愛」のすばらしい極致と寒々としたシベリアや網走を思わせる「流刑地」のアンバンランスさが読者の心をとらえる。「あいるけ」(愛と流の略)という言葉が連載してすぐに流行したのもよくわかる。渡辺さんに聞けば、いまの連載が終わるのは来年の春ごろというから来年また「あいるけ」ブームが起きるだろう。

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