2005年(平成17年)8月20日号

No.297

銀座一丁目新聞

上へ
茶説
追悼録
花ある風景
競馬徒然草
安全地帯
自省抄
北海道物語
お耳を拝借
山と私
GINZA点描
銀座俳句道場
広告ニュース
バックナンバー

茶説

今回は首相の「決死ねじり鉢巻選挙」だ

牧念人 悠々

 今回の選挙は郵政改革の是非を国民に問うものである。この一点で小泉首相は解散した。選挙公約にも掲げ総裁選挙でも訴えた構造改革の本丸「郵政改革法案」が葬り去られたとあっては内部の抵抗勢力と野党と戦うほかあるまい。森前首相が解散を主張する小泉首相に自重を説いたところ「おれは死んでもいい」答えたという。そういう意味では「自爆」「やけっパチ」の様相があるにしても「決死解散」である。だからこそ、37人の造反者(二人立候補辞退)を公認せず、それぞれに自民党の「刺客」を送る。これを不服として綿貫民輔本衆院議長を会長とする「国民新党」も旗揚げ。「分裂選挙」をあえて強行する。この政治手法にさまざまな批判が起きる。小泉首相自身「やってみなければ分からない」といい、多くの識者も「選挙結果の予測は困難」という。筆者は自民党、公明党で過半数(241名)以上を確保すると思う。
 選挙の争点がはっきりしている。「郵政改革」である。自民党のキャッチフレーズ「改革を止めるな」はわかりやすい。もちろん国政には「年金」「増税」「憲法改正」などの問題がある。だか有権者は「郵政改革」一つできないものに期待はしない。世論調査を見ても郵政民営化賛成51.6パーセント、反対31.1パーセントとなっている(共同通信調査)。国際通貨基金も対日審査報告の中で「郵政事業改革をすすめることが日本の構造改革に重要で、構造改革によって経済成長も維持できる」としている(産経新聞)。アメリカの世論も小泉内閣に好意的である。「戦後60年。翼賛政治が亡霊のように頭をもたげてきた」と辛らつな新聞も出ているが当時日本は世界から孤立していた。今回は世界が支持している違いがある。強引の謗りはまぬがれないにしても同一に談じることは出来ない。郵政改革は時代の要請である。「ニューズウイーク」誌(8月24日号)は「世界からか改革の鈍さを批判されてきた日本がいま、突如として革命前夜の雰囲気に包まれている」と報じている。解散時の小泉内閣の支持率は軒並みに大幅に上がった。毎日新聞調査で46パーセント(前回39パーセント)であった。今回の選挙では有権者の40パーセントもある無党派層が自民・公明に流れるとみる。2003年11月の総選挙は「無党派時代の二大政党化状況」を明確にした。この流は今回も変わるまい。だが郵政民営化法案に反対した民主党は自民党の抵抗勢力と同列とみられ、前回無党派層の50パーセントの票が民主党に流れたが、今回は逆風となるであろう。自民党分裂による「漁夫の利」を得ることはまず難しい。
 37人の造反者にふれたい。組織の中では反対意見を言うのは一向に構わない。しかし、党として決定したことに就いては党議に従うのは当然である。あえて反対したのだから、公認されないからといって「ローマ帝国時代の囚人」、「安政の大獄か」「刺客がきた」などと泣き言を言うのは見苦しい。
 小泉首相は平成13年6月東京都議選の応援演説で「改革を邪魔する人は必ず選挙で落選する」と豪語した(8月11日産経新聞)が、小泉首相は今度は「落選させる」ところまでエスカレートした。「選挙とは死ぬことと見つけたり」と感ぜざるをえない。今回の総選挙を「決死ねじり鉢巻選挙」と名付ける次第である。

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。(そのさい発行日記述をお忘れなく)
www@hb-arts.co.jp