2005年(平成17年)8月20日号

No.297

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お耳を拝借(138)

「シンデレラタイム」

芹澤 かずこ

  猛暑の一日、郊外の知人宅にお邪魔して、美味しいお酒とご馳走と楽しいお喋りで時を忘れ、とうとう終電に間に合わず、久方ぶりに深夜のタクシー乗り場に並んだ。こういうご帰還を男性なら差し詰め『午前様』とか、『朝帰り』という形容が適当と思われるが、女性であるからして、敢えて『シンデレラタイム』と言わせて頂こう。
 シンデレラとは女の子なら誰でも知っている『カボチャの馬車』と『ガラスの靴』に代表されるあの『シンデレラ物語』の主人公のこと。魔法使いとの約束の時間『夜中の12時』を過ぎたら総ての魔法が解けてしまうという筋書きになぞって、その時間を何時しか『シンデレラタイム』と名付けて便利に使っている。
 でもこの物語り、もともとは伝承の昔話で、語り継がれているうちにさまざまなバリエーションになっているとか。グリム童話の『灰かぶり』では、白い鳩たちがシンデレラを助け、ドレスも靴も用意してくれ、お城に忘れてくるのは金の靴、帰りの時間も夕方となっており、ペローの童話では、魔法使いが杖をひとふりする度にシンデレラが美しく変身し、カボチャが馬車になり、ここでガラスの靴が登場し、真夜中の12時に帰らなくていけないとなっている。このペローの『サンドリア』が素になってディズニーのアニメが制作され『シンデレラ』のイメージがより定着したと言われている。
 『シンデレラ物語』はサクセスストーリーとして女性にとって永遠の憧れであるが、『シンデレラタイム』はほどほどにしないと後がきつい。



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