1998年(平成10年)5月1日(旬刊)

No.38

銀座一丁目新聞

 

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新山恭子の気軽に心理学(11)

ライフサイクル

新山 恭子

 人生を、幾つかの節目に分ける考え方があります。エリクソンは、青年期、壮年期、又、フロイトは、口唇期、肛門期という身体の部分に例えて分けています。チベットのヒンズー教では、家住期、林住期で、表します。ユングは、こういった定義をしていません。ライフサイクルを、青年らしく、老人らしくといった線引きではなく、それぞれの個性としてとらえています。訳知り顔の青年や、ぶっ飛んでいる老人がいると「らしくない」という理由で、変人にみられます。しかしその人の持つ「元型」が何かのめぐり合わせで、動いていると、年に関係なく、キャラクターとして表われる様です。理屈ばかりを言っている女性は、何かのきっかけで、男性性に目ざめ、それまで経験しなかった論理性にふりまわされているのです。又、しがらみにしばられて生きてきた人が、中年になり、突然、自分の中にある「少年」にめざめ、足が地につかない様な行動に出たりします。これも、無意識の中にある元型が、意識とは関係なく、活発になるからです。そういう自分をみているもう一人の自分の目を持つ必要があります。

 私は今年で50歳になります。振り返って、いつが私にとって一番輝いていた時期かというと、初恋の時でも、青春時代でもなく、37歳の時、ユング心理学に偶然出会った頃です。なんとなく考え、感じていた私の内側を、ユングは、実に明確に言い表していました。日に3〜4冊の本を読み、ワクワク、ドキドキしながら新しい体験している喜びを味わっていました。まさしく恋している様な心境で、周りの風景が、昨日までと変ってみえたりしたものです。子供らしく、老人らしくといった割り切りで何時の間にか本当の自分の出番をおさえている人が多い様です。ユングは、人生を、大きく前半、後半に分け、前半を外ぼりをつくる時代、後半を内ぼりを埋める時代としています。学校で学び、職を得て、基盤を作るのに忙しい前半に比べ後半は、自分とは何かを問うて行く時期になります。そうゆう意味では、後半の方が、より自分らしく生きられる時代といえるでしょう。

 新しい自分に出会うチャンスは、突然やって来ます。心に、ふたをせず、オープンにして、本当の意味で、自由に生きて豊かな後半にしたいものです。

★新山 恭子(にいやま・きょうこ)

1948年(昭23)12月21日、東京都生まれ。東亜国内航空(現JAS)客室乗務員として勤務した後、秋山さと子氏に師事しユング心理学を研究。現在は産能大学経営開発本委嘱講師を務めるかたわら、ドリームコンサルタントとして講演、研修などで活躍。

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