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愛知県瀬戸市の、猿投山麓にある海上の森は、名古屋市近郊にある最後の広大な里山です。ここは東海地方にしか生息していないシデコブシをはじめとした貴重な生物が見られ、野鳥の種類も多い豊かな自然の宝庫です。現在、21世紀万国博覧会の開催予定地とされ、跡地利用としての都市化計画とともに、この場所の自然環境に影響を与えようとしている問題が起きています。ではどんな所なのか、トピックスなど踏まえてお届けします。(図は図上をクリックすると大きくすることができます) 自然通信(7) 4月上旬、東海丘陵の湿地のみに生育し、環境庁のレッドリストにも記載されているシデコブシの花が咲きました。このモクレンの仲間の小高木は、愛知・岐阜・三重のみに分布している貴重な植物です。また、モクレンの仲間は、植物が虫に花粉の運搬をしてもらうために誘い込む手段として、花びらを発達させた初期のグループであるそうです。3日に大群落のある所へ花を見に森に出掛けました。万博の計画では、これらの群落の大部分は保全することになってはいますが、湿地の水が流れる上流域が開発される予定のため、水源が絶たれ、将来的には生育できなくなる恐れがあるのです。 同じ時期、湿地には青い星を散りばめたようなハルリンドウの花もありました。雑木林の林床では、タチツボスミレも顔を出し、心が躍ります。 4月19日に雨天続きの合間の晴天を機に来ましたが、驚いたことに季節が今年は急速に進んだ様です。期待していたカスミザクラはあっという間に残花を僅かに残すのみ。代わりに5月上旬に咲き出すはずのフジがもう咲いているではありませんか!この時期、天気予報では所によっては最高気温30度近くにもなる夏日の報告があり、町でも半袖で歩く人を見掛けます。花暦も10日早いスピードのようです。岐阜県のひるがの高原で、もうミズバショウが咲いたとのニュースがありました。(98年4月21日中日) 南の国で越冬していた夏鳥たちも、子育てのために、海上の森にやってきて、あちこちで囀りが聞こえてきます。夏鳥のオオルリがその青い奇麗な姿で歌っていました。近くでウグイスと、普段は夜に鳴き、その声から「ぬえ鳥」と怖がられるトラツグミが鳴いていて、オオルリとの不思議な3重奏を成していました。巣を作るためにコケを集めるシジュウカラを見て、「ご苦労様」とつぶやきました。 下りの道の途中で、動く小さな固まりがあり、何だろうと寄ってみたら・・・1匹のアカネズミでした。普段は夜活動し、昼間は地面に掘った穴で過ごす、とてもかわいい日本固有の野ネズミです。 この春、例年なら多く現れるはずのギフチョウが見られないのが大変気がかりです。蝶が通る、蝶道と呼ばれる場所でも粘って待ってて、やっと羽が傷んだ一頭に会えたのみ。マニアのコレクションとして狙われ易く、その影響のせいでしょうか?生物はその場に生かしてこそ、無限に続く、価値ある存在であるはずなのに、です。生物たちには、地球規模で、身近な地域の開発で、または人為によって、住みにくく、世知辛い世の中になっているようです。この問題にいつまでも無関心でいていいはずはありません。なぜなら自然界のバランスが崩れることはいずれ、人間にも影響するからです。海上の森の生物たちが、来年の春も無事に次世代をつなぐことができることを、ただ祈るしか、ないのでしょうか? トピックス インフオメーション 他のHP 「海上の森」(野鳥の会愛知県支部公認ページ)
150-0036東京都渋谷区南平台町15-8ウッデイ南平台ビル2F 平成8年度より重点事業「里山の自然と野鳥を守る」に取り組み、里山の鳥類や社会制度の調査、里山保全活動を行っているNGOの活動支援、シンポジウムの開催などを行っています。また、諫早湾干拓事業や千歳川放水路などの大規模公共事業、野鳥の密猟問題など、野鳥や生息地をめぐる全国的な問題にも取り組んでいます。 その他、全国11ヶ所のサンクチュアリの管理運営、国際的な鳥類保護団体のネットワークであるBirdLife Internationalの日本のパートナー団体としての国際協力、「鳥の生育環境モニタリング調査」など保全を進めていくための基礎となる調査・研究など、活動は多岐にわたっています。地域の会員で運営される支部は現在86。愛知では愛知県支部(会員数約2000人)があります。会員の総数は約53,000 名 http://www.museum-japan.com/wbsj/ 102-0075 東京都千代田区三番町5-24山路三番町ビル3F TEL:03-3265-0521 FAX:03-3265-0527 1951年に尾瀬沼を残す活動から発足した、全ての活動が会費と寄付で支えられている民間の自然保護団体です。以後様々な自然を守る活動を続け、これまでに公式に表明した自然保護に関する意見は149件。作成した報告書・資料集は121冊。この5年間では、合 わせて61件の意見・報告をしており、現在取り組む保護問題は約50ヶ所になります。主な内容に、白保の珊瑚礁、白神山系のブナ林の保護活動、最近では長良川河口堰、御嶽山リゾート開発についての意見書の提出など、97年度の総合プロジエクトには沖縄本島北部やんばる地域の生物多様性の保全や、WWF-Japanとともに作成した、「植物群落レッドデータ・ブック」の普及と活用が挙げられています。 海上の森の万博計画については、植物の生態や、鳥類、昆虫、地理などの分野の7人の専門家からなる「海上の森・万博問題小委員会」を設置し、調査報告書「2005年愛知万博構想を検証する-里山自然の価値と『海上の森』-」を97年5月にまとめ、BIE各加盟国に提出しています。 この他に、自然に親しみ守る人を増やすため、ボランテイアで活動する自然観察指導員育成のための講習会を、毎年全国各地で行っています。会員数は約17,000 名 105-0014東京都港区芝3-1-14日本生命赤羽橋ビル6F TEL:03-3769-1711 FAX:03-3769-1717 WWF(World wide Fund For Nature 世界自然保護基金)は、1961年に設立された世界最大の民間自然保護団体で、世界各国約470万人と約10,000 社・団体のサポーター(会員・寄付者)に支えられています。スイスに本部を置き、25カ国に各国委員会、6カ国に提携団体を設けて、地球規模のネットワークの中で活動しています。 各国委員会の一つ、WWF Japanは1971年に設立。サポーターは約55,000 人と約1,600社・団体に支えられています。自然保護事業は主に下の3分野に分けられます。 3の助成事業では、動植物種や生態系の調査研究・保護活動、環境教育、シンポジウム開催、出版活動など、自然保護を目的とした多種多様なプロジエクトを支援しています。95年度・96年度には、万博の開発から海上の森を保全するためのパンフレット「自然博物館・あいち」の出版や、動植物・文化財調査が、この助成金を活用することで行うことができました。 署名活動にご協力下さい! 地元の自然保護団体が、「21世紀地球地球EXPO『愛知万博』の開催地変更を要望する署名(海上の森以外に変更を!)」の活動を来年の春までをめどに全国に向け行っています。自然環境を破壊しない代替地(瀬戸市の陶土採掘跡地や青少年公園など)で万博を行って欲しいという内容です。連絡先は下記の通りです。ご協力よろしくお願い致します。
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