2004年(平成16年)11月1日号

No.268

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(31)

―レースはヒーローを創る― 

  「レースはヒーローを創る」。菊花賞で人気薄(8番人気)のデルタブルース(岩田康誠騎手)が勝ったとき、改めてそんな感慨を抱いた。そのことを呟くと、知人は同感を示しながら、こう口にした。「それにしても、珍しい名前の馬が勝ったね」。続けて、「デルタのブルースなんて、聴いたこともないよ」と。いわれるまでもなく、確かにそうだ。そもそもブルースには、どこか哀愁の漂うイメージがある。そんな名前の馬が菊花賞の激戦を制するのだから、面白いといえば面白い。事実、ブルースとは逆に陽気なイメージのマンボ(スズカマンボ)は、6着に敗れている。
 ところで、デルタブルースの母は、アメリカ産馬デキシースプラッシュ。その父はデキシーランド。「デキシーランド」といえば、19世紀中頃、アメリカ南部で作られた歌。南北戦争当時、南軍の間で歌われ、広まったことで知られる。馬名の命名の由来はそこからきているのだが、馬主の祈りが込められているようだ。その血脈を受け継いだ牝馬(デルタブルースの母)に付けられた、デキシースプラッシュの「スプラッシュ」には、「泥を撥ね上げて走る」意が込められている。ひたむきな勝利への夢を託している。その願いどおりに、産駒のデルタブルースが、異国の日本のGTを制する栄冠に輝いたというわけだ。
 レースはヒーローを創る。そのヒーロー誕生には、長い物語がある。だからこそ、菊花賞というレースは、単なるレースではなく、まさに1つのドラマだ。なお、デルタブルースの優勝は、別の意味でも注目される。母系についてはすでに触れたが、この馬の父がダンスインザダークであることも見逃せない。ダンスインザダークといえば、大種牡馬サンデーサイレンスの後継種牡馬としての期待が大きい。スピードとスタミナに優れた産駒を送り出し、菊花賞も去年(ザッツプレンティ)に続いて連勝。ダンスインザダークの種牡馬としての評価も高めている。
   この馬の血脈を、関係者は長く伝えていきたいと考えているだろう。それはともかく、菊花賞というレースは、新たなヒーローを世に送り出した。騎乗したのが公営の岩田康誠騎手(30・公営・園田)で、GT初挑戦で初優勝という話題も添えた。岩田騎手はJRAで03年22勝、04年44勝。JRA騎手受験の「2年で20勝」の規定をクリア。騎手免許試験に合格すれば、念願のJRA騎手誕生となる。二重、三重の喜びのドラマも生まれた。

( 新倉 弘人)

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