1998年(平成10年)4月10日(旬刊)

No.36

銀座一丁目新聞

 

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新山恭子の気軽に心理学(9)

グレートマザー

新山 恭子

  私達の心の深い所にある無意識の領域には、元型と呼ばれるものがあります。元型は、普段、全く表われないのですが、人が、新しい経験をしたり、何か感じたりする時、湧き上がり、行動や言動を支配していきます。元型の中の一つに「グレートマザー(太母性)」があります。これは、何かを育てる力、包み込む力、生産する力で、創造的な作用を起こします。

 女性、男性共にもっていて仕事をする時、家族と関わる時、このグレートマザーの力は大きな役目を果たしています。只、「過ぎたるは及ばざるが如し」で、この力が、き付かぬ内に、どんどん大きくなって動き始めると、「育てる」どころか、破壊する力に替ってしまいます。例えば、子供を愛し、子供に良き様にと、何もかも親が引き受けて、やりすぎると、子供は育つどころか、スポイルされてしまい、持っている可能性を、すっかり親に喰われてしまう結果になります。親の方は、かなり無意識で、子供に関わりますので、なかなか、気付かずどんどんエスカレートしてしまうようです。すると、子供は、社会の中で自信をなくし、指示がなければ動かず、自分らしく人生を創っていけなくなります。

 私達の内面にある、グレートマザーの力に、気付いていく事は、あらゆる関係を、健康的にする為に必要です。無意識に、はまってしまう性質だけに、気付くのは、とても難しいのです。何でもない事に、大きく反応を起こす時、私達の元型が動き出すと考えてください。自分の心のブレーキとアクセルを上手に使って、太母性を使っていくと良いでしょう。私自身、出産の時、子供の顔をみた瞬間、このグレートマザーにとりつかれ、母親の顔しか持たない十年がありました。しかし、子供が育ち、登校拒否や様々の問題にぶつかり、いかに、私が、「親」という名の元に子供を支配していたかに気付いたのです。そのまで「この子達は、私がいなくては死んでしまう」と思い、世話していたのですが、その時から、「いつ私が死んでも、とりあえず、自分の意見を持って、それを伝えられる人間に育てよう」と、方針を変え、彼等と関わり始めました。

 子供がそれぞれの世界を持ち、親も、個人としての世界を持って、初めて、人間対人間の尊重し合える関係を育てていけます。「子供は所有物ではない」、あたり前の事に、気付くのに、十年、かかった訳です。何かトラブルが起きた時、それは軌道修正を教えてくれるシグナルです。こわがらずに、自分を振り返り、立ち止まる勇気を持ちましょう。

★新山 恭子(にいやま・きょうこ)

1948年(昭23)12月21日、東京都生まれ。東亜国内航空(現JAS)客室乗務員として勤務した後、秋山さと子氏に師事しユング心理学を研究。現在は産能大学経営開発本委嘱講師を務めるかたわら、ドリームコンサルタントとして講演、研修などで活躍。

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