1998年(平成10年)4月10日(旬刊)

No.36

銀座一丁目新聞

 

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 愛知県瀬戸市の、猿投山麓にある海上(かいしょ)の森は、名古屋市近郊にある最後の広大な里山です。ここは東海地方にしか生息していないシデコブシをはじめとした貴重な生物が見られ、野鳥の種類も多い豊かな自然の宝庫です。現在、21世紀万国博覧会の開催予定地とされ、跡地利用としての都市化計画とともに、この場所の自然環境に影響を与えようとしている問題が起きています。ではどんな所なのか、トピックスなど踏まえてお届けします。(図は図上をクリックすると大きくすることができます)

自然通信(6)
早春の海上の森

牧野 紀子(愛知県)

 ウグイスやコジュケイの囀りく耳にするようになりました。3月8日に、毎月第2日曜に行われる、日本野鳥の会愛知県支部主催の探鳥会があり、私は久々に参加することになりました。屋戸橋からしばらく行くと、カシラダカやイカルを見付けられ、私は見つけて下さった方々のプロミナー(鳥を見る望遠鏡)を覗かせて貰いました。コース途中で先月このページで取り上げた、スズカカンアオイの株を見つけ、皆で花を探しました。篠田池まで来ると、この池ではお馴染みの青い宝石と呼ばれるカワセミや、もう夏羽の赤い顔に変わったカイツブリがいます。しばらくすると・・・種の保存法で国内希少野生動植物に指定されているオオタカが、ゆっくりと舞っていくのが見られ、歓声が上がりました。里に下り、立ち木トラストのある民家辺りでは黒とオレンジと銀白のジョウビタキ雄が迎えてくれました。

「青い鳥」ルリビタ(雄)

「赤い鳥」ベニマシコ(雄)

 翌日9日に再び、探鳥会にも参加していた御婦人、Uさんと一緒に朝8時から森に行きます。平日の朝早く、人も少ないと心なしか鳥たちもリラックスしている様です。最初に、この通信(4)で紹介したあのルリビタキの青い奇麗な雄が現れました!越冬で山地から降りて来ているミソサザイが、「チッ、チッ、」の地鳴きから「ピピスクスケス・・・」の囀りに変わって鳴いているのが聞こえます。山地に帰る前のウオーミングアップといった所でしょうか。四ツ沢から上がる途中、マヒワが11羽ほど、2人のすぐ上のヤシャブシの木に止まり、私達にはお構いなく実を突つきはじめました。この様子を座って10分以上は楽しむことが出来たのです。コジュケイが道を横切ったり、カラ類達が地面に降りて餌を探したりと、彼らの生活場面を「見させて頂く」探鳥となりました。森が野鳥に取って無くてはならない物であることが良く分かります。帰りのコースでは、冬の「青い鳥」ルリビタキに対し、冬の「赤い鳥」ベニマシコの雄2羽が川辺の樹上に止まっていたのには大感激でした。暖かい日和の中、ムラサキシジミやキタテハ、ルリタテハ、テングチョウなどの蝶たちもお目見えです。

 探鳥会は、多くの目で鳥を見つけたり、仲間たちで鳥や森のことについて語ることが出来るという良さがあります。小人数での静かな、散策も、鳥をじっくりと見れる良さがあります。(鳥の当たりはずれはどちらもありますが。)いずれにせよ、自然に親しむ機会があることは喜ばしいことです。

 3月21日にはピンクのショウジョウバカマや、キブシ・クロモジ・ダンコウバイの黄金花が次々に咲いていました。ヤブツバキの赤い花もあります。4月上旬にはシデコブシの開花も見られることでしょう。

ルリタテハ(左)とテングチョウ(右)

キブシ(上)とクロモジ(下)

トピックス

海上の森で守って欲しいこと

 春を迎え、海上の森では色々な花が咲き、虫たちも活躍しだし、一番美しい季節 になってきます。それに伴い、訪ねる人も多くなると思います。車で森の中まで入 るのは控えて、歩いていくことをお勧めします。看板も出ていますので指示に従っ て下さい。

 また残念なことに、植物の盗掘や蝶などの乱獲の話も耳にします。個人の楽しみ のため、商業目的のための生物の採集や採取は止めて下さい。野生の植物が可憐な 花を付けるのは、人が楽しむためではなく、人類が地球に登場する以前から、虫に 花粉を他の仲間の花に運んでもらい、種として子孫を残すために進化させてきたた めです。勿論蝶を始めとする虫たちは、吸蜜の引き換えに花粉を運ぶ役割を担って います。自然界の中でそれぞれの植物人生、虫人生を全うしてこそ、彼らが存在す る意義があります。生物の美しさを所有するのではなく、足を運んで、森で彼らが 生きている様を楽しむことへと、付き合いかたを変えることが必要ではないでしょ うか。

 ゴミも各自で持ち帰りましょう。

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