2004年(平成16年)1月10日号

No.239

銀座一丁目新聞

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山と私

(1)
国分 リン

−平均69歳の蔵王スキー−

  新聞の知って帳にウインパーの名言「アルプス登攀記」の最後に「登山のおかげでぼくは、人間が持ち得る最良のものを二つー健康と友情ーを手に入れることができた」と。山は時に厳しく、時に優しく、人に対す。それ故に健康をもたらし、友情を育む場になるのだろう。と記されていた。まったくそのとうりで深く心に残そうと思う。
 2001年からお正月は山の仲間の72歳のIさんと、65歳のFさんと、60歳(私)の女性3人で、一人暮らしの寂しさと気楽さで何とはなしにスキーで年越しをしようと話が纏まり、苗場・斑尾スキー場で新年を迎えた。
 今年はさくらんぼの季節に蔵王を訪れたIさんが素敵なロッジを見つけ8月にもうお正月の宿を予約したよ。との事。今年は彼女の友で2月に御主人を亡くされた77歳のTさん、山仲間の69歳のUさんと女性5人で、12月30日早朝発のつばさで山形へ、今年は雪が少なく積雪0、バスに乗り換え蔵王温泉へ、シニアリフト券(割引のある物)を購入しスカイケーブルで1277m 中央高原駅へ、さすがにどっさりの雪が待っていました。歩いて10分程でドッコ沼畔のロッジ到着。昼食後スキーウエアに着替えマスクとゴーグルを着けたらもう年齢など関係なく、ましてスキーを履いて滑り出したら若者などに負けないスピード狂ばかりです。鳥兜駅から大平コースを一気に上ノ台までの長い距離を滑り、初日なので最年長のTさんが無理をしないで先に帰るとの事で見送り、リフトで1350m地点 夕方になり雲が茜色に染まり、樹氷がキラキラ夕日に輝く様にしばしうっとり。
 31日天候晴れ、9時からリフトに乗り継ぐ。朝一番のスキーは雪の状態が素晴らしいのでとても気持ちが良い。スキーの下できしきし音がする。
 パラダイスリフトの終点は有名なザンゲ坂の終わりに着き、素晴らしいモンス
ター達の出迎えに遭う。樹氷原コースの気持ちの良い坂を滑り下り樹氷高原駅に到着。12月に新しいロープウエイになり機動力が高まり、あまり待たずにスキー場最高地点(地蔵山頂駅1661m)に到着する。滅多にない(1割位)好天で風もなく360度の大展望。素晴らしい!充分にモンスター達を楽しんだ後に、大きなお地蔵様と記念撮影、いよいよメインのザンゲ坂を滑り降りる事に挑戦。 5人それぞれのスタイルで必死の形相で長いコースを無事滑る。呼吸をはずませる人、余裕で平然としている人、転ばないように必死な人等さまざまです。広い広い百万人ゲレンデを滑った所で、TさんとFさんは無理をしないでロープウエイ山麓線の乗り場で待つとのことで別れ、残った3人は夢中で凄いスピードで滑りまくり、挙句の果てにコースを間違え大森の壁へ突入。70歳コンビはあっという間に滑り降りて行きました。私にとってとにかく凄いところでした。
 滑りおりた所のミスに気づきあわててクワットに乗り継ぎ横倉に着いたのは11時半でした。ここは樹氷観光コースの出発点です。観光客優先で、整理券が渡され、結局皆でロッジに着いたのは13時でした。この頃のスキー靴は大変重くロボット状態なので、私達の昼休みは靴を脱いで休めるのが一番でした。緊張がほぐれ丁度良い休息タイムが取れました。最年長のTさんが「犬が私の帰りを待っているので、明日は滑らないでかえるわ。」との事で彼女が選んだコースを皆で付き合い高鳥コース3Kmを休まず一気に上ノ台まで滑り降りました。決して無理をしないゆったりした滑り、「私は新潟の高田生まれで、昔スキーで学校へ通ったのよ。」とサラリといい、決して年には見えない若さの秘訣はの問いに、「くよくよしないで明るく生活するのよ。」
 ロッジへ戻り、大晦日23時30分に年越しそばが準備できました。との事でうれしく食べてカウントダウン。広いロビーで宿泊者達と年始の挨拶に華がさきました。大きな窓からは澄んだ下弦の月と星が凛と輝き、思わず手を合わせ今年の無事を祈りました。
 元日快晴、ゆっくりと急ぐことなく準備をし、また樹氷原コースを気分良く滑り百万人ゲレンデを通り、黒姫コースへ、今日で3日目疲れが出たのか、膝を痛めているFさんが急坂をふんばりがきかず、転んで一回転してしまった。幸い怪我はなかった。本当に良かった。あまり無理は駄目と皆肝に銘じた。ゆっくり休んでゲレンデの端から端へ戻る事になり、Fさんも頑張っている。いつもいつも彼女の頑張る心持には感心している。Fさんが無理をしないでロッジへ戻るとの事で皆で送リ、鳥兜山から大平コースを一気に下る事にした。スタート地点に立ったその場所に大きな大きなダケカンバの木に、見事な樹氷の花が紺青色の空に咲き、思わず何枚もシャッターを押しました。この感動を皆に伝えられる写真が撮れてますように。長い大平コースを20分程で滑り降り、息をはずませ、満足しました。
 毎晩のおしゃべりタイムも大変楽しい。ウイーンフィルのニューイヤコンサートを皆で聴き、美しく青きドナウを大きな声で合唱しました。楽しかった。
 1月2日最終日、雪が降り、ホワイトアウト状態で、結局Iさんと私で滑る事になりましたが、周囲の景色も見えず、突然の人影にびっくりして、晴れた斜面だけを何回か滑り、無理をせず終わりにした。4日間楽しく過ごせた。蔵王スキー場は広く楽しくコースが豊富で、また来年と約束した。
 72歳の彼女に定年後の感想は?自分のやりたい事を計画的にしているのであっという間に楽しく過ごせたよ。69歳の彼女はこれからも長く山歩きをするため毎日40分以上は歩き、週に2回ストレッチ体操と、アクアビクスで心肺機能を高めているよ。との先輩達の経験談に若さとは心・感動・鍛錬に尽きると教えられた。

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