1998年(平成10年)4月1日(旬刊)

No.35

銀座一丁目新聞

 

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夢の効用

新山 恭子

 寝ている時にみる夢、これはユング心理学では、とても重要なものです。夢は、意識している自分ではなく、無意識の領域から浮かび上がってくる現象ととらえ、気付いていない自分を教えてくれると言います。様々なメッセージを伝えてきますが、意味を考えるのではなく、夢を味わう事が肝心です。夢の中の自分が、楽しかったか、恐かったか、悲しかったかが、重要です。

 中学生達の夢を聞いていると、戦争、洪水、何かに追いかけられるといった危険な状況が良く出てきます。これは、子供から大人の大きな心理的変化が起きる時、今までの自分が、一度死んで、新たに再生します。大きな変化を起こす時、非常に不安を感じる為、大変な状況を使って、夢がその不安を伝えてくれるのです。昔は、子供達にとって恐い物が日常にたくさんありました。お化け、近所のおじいさん、そして夜の闇がありました。条件なく恐い物は、子供が育つ段階で必要です。何かわからないけど、自分の力では及ばない恐ろしい物の存在が、自分の限界を教えてくれる訳です。

 秋田のなまはげ等は、単純に子供に恐い感覚を伝えて、子供達に、本質的な謙虚さを教えているのでしょう。現代の都市生活では、夜も明るく、「闇」がなくなっています。人工的な明るさの中で、自分の心の闇の無防備な力が爆発してしまうのではないでしょうか。誰でも、残忍性、攻撃性を持っています。普段から自分の影の部分、マイナスの部分とうまく付き合っておく必要があります。夢は、その人の持つ、いろいろな力や、気付いていない自分が、あらゆる要素を動員して一つのドラマを仕立てて、メッセージを送ってきてくれます。不思議な夢を見た時、メモをする、友達や家族に夢の話をする等を繰り返すだけで現実の自分と、内面の自分のバランスがとれて行きます。

 一見、何の意味も得にもならない夢が、かなり心を健康的に保つのに、大きな役割を担っています。夢の中で、自分が、していた事を、実際にやってみたりするのも、今まで見えなかった何かに気づくきっかけになります。今夜、夢の中で、もう一人の自分に出会ってみませんか。

★新山 恭子(にいやま・きょうこ)

1948年(昭23)12月21日、東京都生まれ。東亜国内航空(現JAS)客室乗務員として勤務した後、秋山さと子氏に師事しユング心理学を研究。現在は産能大学経営開発本委嘱講師を務めるかたわら、ドリームコンサルタントとして講演、研修などで活躍。

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