1998年(平成10年)4月1日(旬刊)

No.35

銀座一丁目新聞

 

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耳よりな話

ナイフ

河村 保男

 ナイフ一本で、りんごの皮はみるみるうちに……。鉛筆は芯の先まで美しく、きれいに削られ筆箱に並ぶ。まるで芸術品である。

 親が小学校に入る子供に少しずつ教えていった。やって見せ、指から血を出しても、チュッと吸ってやり、大丈夫そのくらいと励ました。危険だが、子供にとっては、楽しい楽しい道具、魔法の小さな小さなカ・タ・ナだった。

 子供が大好き、子供も大好きなのに……カタナの受難時代がやってきた。傷つける物は恐ろしいモノ、学校は、持たせない使わせない、大事な子供を傷つけたといきり立つ親には叶わない。家でも学校でも巧みに操ってのエンピツ削りの妙技は消えた。今や、ナイフはファッション、格好よく持って振り回す、一本ポッケに忍ばせてるのがナウイのだという。いじめいじめられ護身用にか威嚇のためか。もうそんなのやめにしょう。昔のように竹とんぼに紙鉄砲、りんごを剥いたり、親と一緒に楽しもう。ナイフは子供の夢なのだ。

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