2002年(平成14年)12月20日号

No.201

銀座一丁目新聞

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茶説

すべてはリーダー次第である。

牧念人 悠々

 早稲田のラグビーが強くなった。10年の低迷が嘘のようである。何故強くなったのか。それは清宮克幸さん(35)が監督に就任したからである。「荒ぶる」復活の秘密について毎日新聞夕刊(12月12日)が特集を組んでいた。スポーツ紙が本来扱うべきニュースである。当然であるが、その時宜を得た取材意欲に敬意を表したい。
 清宮さんの指導方法を柳生新影流の極意から分析する。その極意は1.眼 2.足 3.胆 4.力である。まず「眼」。目配り。眼のつけどころである。清宮さんが取ったのは1、フルタイムの指導である。「選手個人の能力を把握し、チーム全体のレベルを上げてゆくためである」つまり、現場主義をとった。選手と付き合っておれば性格も技量も健康状態もわかる。しかもコミュニケーションまで上手く行く。2、スタッフの一新である。監督の考える理想のラグビーを理解してくれる「現代ラグビーを知る」10人を集めた。組織を上手く機能する人材である。
 次は「足」である。大地にしっかり足がついていなければ、何事のも勝てない。ヘッドコーチと一緒に前年度の試合をすべてビデオで見て、勝てない要因を徹底敵に分析、ボールの動き、ミスの回数、攻撃の精度などを数値化し、図解やビデオを使って視覚的に学生に見せた。選手達の信頼を得、めざす目標と自信を与えた。ビデオの活用は重要で、試合や練習中の各人のプレーを細かい項目に分けてデータを取り、評価するチェックシートも作成している。それによって選手達は練習の目標を得、自分たちで考えるようになる。
 ケガに備えるため専任のドクターを置くなどメディカル体制を一新した。フィットネスコーチをおき、練習メニューを管理している。そのため、けが人は半減した。
その次は「胆」である。必勝の信念である。どんな苦しい戦況になっても「必ず勝つ」という気持ちを失わない事である。ことしのスローガンは「アルティメット・クラシュ」(圧倒的な勝利)である。これは周到なる練習と卓越する指導によって生まれる。
次は「力」である。体に力が入っていては試合には勝てない。練習時間を2時間とした。ムダを省いたのである。それだけ集中できる。練習も試合の7、8割を占めるプレーの練習を重視した。日ごろからイメージトレーニングもおこなっている。
 一流のラガーマンになるためには選手一人一人の体力、資質、精神力が優れていなければダメである。しかも柳生新陰流の極意は四つが渾然一体となって発揮されなければ、効果をあげえない。24対0と完封した明治戦(12月1日)でも15の場面でミスをしているという。戦いはミス、錯誤の連続である。ミスをした際、その傷口を防ぐものは、組織の力と卓越した個人技である。ラグビーの奥は深い。

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