2002年(平成14年)12月20日号

No.201

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(32)

−寛げる居場所− 

 この前、情報の話題に関連して、情報機器の高度化を取り上げ、「ケータイ」による不正事件にも触れた。その直後、符節を合わせるように、もっと手の込んだ事件が起きた。一橋大学における、学生の集団カンニング発覚。普通のカンニングではニュースにもなるまいが、一流の国立大学、それも一橋大学とあって、話題になった。カンニングそのものは古くからあった。もっとも、手の込んだものはなく、せいぜい「ペーパー・カンニング」が主であった。あの他愛のないものに比べると、今回の事件は、いかにもIT時代を反映したものといえる。携帯電話は普及し、単に「ケータイ」と呼ばれ、「電話」の語が省略されるのが一般化している。機能的にも電話の領域を超えている。その利便性を若者が追求、利用したとしても、当然の成り行きといえる。今後、さらにさまざまな分野で、好ましくないことは出てくるだろう。
 別な分野における「ケータイ」を利用した事件としては、地方競馬で起きている。厩舎情報の伝達と贈収賄が絡んだ事件だった。幸いなことに、騎手は関与していなかった。だが、今後のこととなると、どうだろうか。海外の競馬界では、騎手の「ケータイ」使用が何らかの不正に繋がることを恐れ、対応に頭を痛めているところもあるようだ。外部との接触に、不正が入り込む余地がないとは限らないからだ。
「ケータイ」問題はさておくとして、今年はさまざまな事件、話題があった。馬や競馬という限られた世界から世の中を見ても、今年の不況や世相を窺うことができる。例えば、名門で知られる早田牧場と関連会社の破産もその1つだった。これについては、すでに取り上げたところだが、その後の問題が尾を引いている。名種牡馬ブライアンズタイム(牡17歳)を預託していたブライアンズタイム会が、損害賠償などを求めるというもの。同会は、早田牧場の関連会社CBスタッドに預託、事務手続きの一切を任せていた。だが、それも破産した。収益約6億円のほか、1株当たりの配当約1000万円が見込まれていたのだが、CBスタッドの通帳には僅かな金しか残っていなかった。数億円にのぼる金が不正流用された可能性があるという。ブライアンズタイムといえば、今年のダービー馬タニノギムレット、皐月賞馬ノーリーズンなどを輩出し、今後が期待されていた名種牡馬。それだけに、今後の成り行きが注目される。
 こんな事件は別として、個人が大事な金を預けていて、それが戻ってこないとしたらどうだろうか。そんな目に遭った人も少なくない昨今である。牧場や馬の話だからといって、他人事では済まされない思いの人もいるだろう。馬や競馬の世界を見ていて、気付かされることも多い。1年を振り返るとき、小さいと見られる出来事にも、記憶に留めておくべきことがあるように思われる。あなたは如何だろうか。

(宇曾裕三)

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