2002年(平成14年)12月20日号

No.201

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(69)

-リフォーム

芹澤 かずこ

 

 靴下の繕いをしていて「今どき珍しい光景だ」と娘に笑われた。戦後、女性と靴下は強くなったと言われているけれど、それは化繊が出回ったからで、天然素材のものはそんなに強くない。全体が切れるというほど弱くはないが、靴を履いていて当たるかかとの部分だけが擦れて薄くなってしまう。
 冬になると足元が冷えるので、好んで絹のソックスを使用しているが、大して履かないうちに矢張りかかとの部分が薄く透けてしまう。化繊の物に比べると幾らか高値ではあるし、他の部分は全く切れていないので、どうしても捨てる気になれず、そこで昔とった杵づかとばかり同色の糸を捜して繕いを始める。使っているうちに、また同じ個所が擦れるが2、3回は繕えるので、それでよしとする。
 戦後の物のない時代に育ったせいか、物が有り余っている時代を迎えても、物を粗末にすることが出来なくて、体型が変わって着られなくなった洋服でも、いつか何かになるだろうと取っておき、子供や孫が小さいうちはアップリケや刺繍などを施して、よく子供服に仕立て直した。
 かと言って買い控えをする気は全く無く、つい安いからと買い込んで、その時は好んで着たものでも、加齢による肌のくすみのせいか、急に似合わなくなるということもあり、またぞろ物が溜まりだした。今の品物は丈夫に出来ているから、靴下みたいに擦れて着られなくなるというのは殆どない。誰かに着まわしでもしない限り、やはり処分するのは勿体無いので、衣替えの度に広げては考えて、また片付ける。
 ある時、化繊綿の入ったセミロングのコートを片付けていて、綺麗な裏地がついているのに気がついた。表地があまりにも地味なので若いときにはいいけれど年を取ってくると余計に顔がくすむので、もう長いこと着ないでいたものである。
 裏返しして袖を通してみた。ちょっと手を加えればパジャマに羽織るガウンに軽くて暖かくて最適だ!。どうして今まで気が付かなかったのかと、早速その日のうちにボタンを付け替えたり、手直しをして素敵なガウンの出来上がり。新しく仕立てるばかりでなく、既成のものを自分流にアレンジするのも、なかなかに楽しいものである。



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