2002年(平成14年)10月1日号

No.193

銀座一丁目新聞

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安全地帯(23)

−日本人はエゴのかたまりだ−

−真木 健策−

 同埼玉県戸田市のJR埼京線の3駅に「ご自由にご利用ください」と、備えてあった1300本の傘が利用されたまま、一本も戻ってこないという(毎日新聞埼玉版より)。
 これらの傘は昨年10月に1000本今年5月に300本が寄贈され駅利用客に重宝されていたが、いまやすべてなくなってしまった。この現象をみるかぎり、日本人には自分さえ良ければいい、他人のことはどうでもいいという考え方が一般的になってきたように見える。借りたものは必ず返すという当たり前のことをどこかへやってしまった。生きてゆくために守らなければいけない公徳心やルールをかたくないに守るというる愚直さが全くない。不意の雨で駅の備え付けの傘で助かったという感謝の気持がないのか。「善意を踏みにじるな」と怒ってみても始まらない。戦後民主主義はいつのまにか利己心を育て自己の権利を主張してはばからない人間を生んでしまった。
 前野徹さんはその著書「第四の国難」(扶桑社刊)で次のように嘆いている。「私の感覚では昭和45年(1970)までは、日本人の魂を持って、経済再生に貢献した人がいたが、それ以降、戦後30年を過ぎ、40年を過ぎてくると、その残滓さえも消え去り、もはや日本人全体が利己主義に堕していったように思う」
 迂遠かもしれが、まず家庭から始めなければならない。駅から傘を借りてきたら翌日、家族の誰かが「その傘を駅にかえさなければダメですよ」といおう。それを見て真似をする。当たり前の事を当たり前にすればこの世はだんだんと良くなる。その後、50ほど傘がまた寄贈されたという。いまだ善意が残っているのに救われる。

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