2002年(平成14年)10月1日号

No.193

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(61)

-ハイヒール

芹澤 かずこ

 

 若い頃にはヒールの部分が細くて、高さが7,8センチもあるような靴を好んで履いていました。背が低いこともありましたが、洒落っ気と同じくらい身も軽くバランスも良かったのでしょう。子育ての最中でも多少ヒールを低くした程度で、ペッタンコの靴など履こうとも思いませんでした。
 それが最近では、何処に行くのにも先ず歩きやすいこと、安全なことを前提にして靴を選ぶようになりました。昔と違って、カジュアルな靴も品数が豊富になった、ということも欠かせない要因です。今一番のお気に入りは、エナメルのカジュアルシューズ。底は平らなのですが、ヒールは3センチほど高くなっています。かかとをすっぽり包んでいるのですが、くるぶしのところはカットが入っていて履きよく、ストッパーも利くし、なによりクッションがよくて、歩いていてもコンクリートの硬さが直に響かないのです。
 足首を痛めてからというもの、革底の靴の、あのコツコツという何とも心地よい振動にもはや耐えられなくなったことと、公衆のマナーの問題も大いにあります。特に雨の日など駅の階段は滑りやすく、そこへきてビニール袋や濡れた新聞紙が散乱していたり、普段の日でも後ろから若者がダダッと駆け下りてきて、危うい思いをすることも間々。
 実際に、肩が触れて階段から転げ落ちて、ひざを怪我した知人もいれば、未だに高いヒールの靴を履き続けていて、自らこけた友人もいますので、若い人がつっかけのようなハイヒールを履いて、それも颯爽となら兎も角、よたよた昇り降りしているのを見かけると、昔のことは棚に上げて、危なっかしいな、と思ってしまいます。



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