花ある風景(99)
並木 徹
サッカー熱も冷めたと思うが、どうも気になるのであえて書く。英領モントセラトはどこにあるかご存知であろうか。手元にあるポケット世界地図(平凡社1968年版)よると、プェルトリコの東、カリブ海にある。面積102平方キロの小島である。三宅島の2倍のところに5000人が住んでいる。1966年の時、人口14000人だったから三分の一に激減してる。バナナ栽培と観光事業しかない島だから仕方あるまい。その上、1996年、スフリエヒルズ火山が噴火、国土の半分以上が居住不能となった。唯ひとつしかなかったサッカー場も使えなくなった。150人のアマチュア選手がいる。FIFA加盟は96年、ランキングは203位で世界最低である。 ブービーの202位はプータンである。この国は中尾佐助の名著「秘境ブータン」(1959年、毎日新聞刊)でよく知られている。インドとチベットにはさまれた王国、面積は4万7千平方キロで、北海道の半分の広さである。人口66万人(スポニチ・広辞苑によれば145万人)世界唯一の密教国家。過半数がラマ教を信仰する。FIFAでは最もあたらしいメンバーで、加盟は2000年。サッカーの歴史は古く、アマチュア選手は900人を数える。
昔のえらい先生が「地理と歴史はよく勉強せよ」とのたもうた。サッカーのお蔭で地理の知識がふえた。それでも世界地理はもっと勉強せねばならない。
横浜でワールドカップのサッカーの決勝戦が行われた6月30日、プータンの首都、ティンプーではプータン対モントセラトの「世界最下位」決定戦が開かれた。プータンが4対0でモントセラトを破った。モントセラトの選手7名が高山病(テエィンプーの標高は2500メートルもある)や食中毒のため体調を崩し、動きが悪く、日ごろの実力を発揮できなかった。
この試合はオランダのサッカーフアンのアイデアで、FIFA公認である。入場は無料とあって入場者は1万人をこえた。スポンサーはオランダの広告会社との本の映画会社である。それにしても粋なことをする。ともすれば、見向きもされない試合にスポットを当てたのは気持ちの良いニュースであった。
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