2002年(平成14年)2月20日号

No.171

銀座一丁目新聞

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安全地帯(1)

−真木 健策− 

 今思い出してもぞっとする。宮城県に住んでいたころ、車を運転して帰宅途中、ハッと気がつくと、二車線のうち右側の上り車線を走っていた。慌てて左車線にハンドルを切り替え、事なきを得た。居眠り運転が原因であった。30年も前のことである。
 ほんの何秒のこと、油断は禁物である。それ以来、眠気をもよおすと道路の脇の空き地に入るか、高速道路であれば、サービスエリアで休むようにしている。
 数年前、家族ぐるみで付き合っていた自転車屋の息子が、乗用車を運転、トラックと衝突、なくなった。30歳であった。あとには奥さんと幼い子供がのこされた。沖縄に住む息子の岳父も交通事故で長年、寝たっきりとなり、そのままこの世をさった。5人の子供を育てた母親の苦労ははかりしれない。
 年間の交通事故による死亡者は1万人をこえる。交通遺児、母子家庭の激増はいたましい。警察の指導、取り締まりだけでは交通事故は減らない。一人一人が安全運転を心掛けるほかあるまい。
 幸い私は46年間、無事故、無違反である。安全運転の初心を忘れないからである。ともすれば、人は馴れから心に隙ができる。ついつい違反を起こしがちである。車の時は常に自戒している。
 一方で歩行者もルーズである。先日、老人が左側を歩いていたので、つい親切心をおこし『人は右側通行ですよ』と言ったら『日本は昔から左側通行だよ』と逆に怒鳴られた。道路いっぱいに広がって歩く学生、すぐそばに横断歩道がありながら、車道を横切る幼児を連れた若い母親。付和雷同型の日本人は一人が信号無視すると多くの人がそれに引きずられるという。心すべきことである。

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