花ある風景(85)
並木 徹
「クラシカル ケン アマド」の演奏会に出かけた(2月1日・東京・新宿・安田生命ホール)。ケン アマドの歌を聞いたのは、2000年の12月。その声にほれた。ピアノ 吉川郁郎 ベース 山口良夫 ヴァイオリン 工藤晴彦 パーカッション 市村誠司 このバックがいい。音楽性が高い。息があっている。けしてケンの歌の邪魔をしない。
この夜、日本の歌二曲を含めて十六曲をきかせた。350席のホールをほぼ満席で埋めた。シューマン作曲、歌曲集「詩人の恋」より、「この美しい五月に」と「ひかりさす夏の朝に」を歌う。シューマンにはこの他、歌曲集「女の愛と生涯」があり、ピアノ曲を多くつくった。夫人のクララは著名なピアニストである。
ケンは歌う前に多少の説明を加える。一番後ろの席であったのでよく聞き取れなかった。歌は快く響いた。
ケンを応援する知人に頼まれて15人に招待状を出した。全く返事をよこさなかったものが数人いる。こんな素晴らしい音楽会に誘っているのに、みすみす、至福のひとときを放棄したのは残念である。水戸、静岡からきてくれた知人もいてうれしかった。
シューベルトの歌曲集「白鳥の歌」より「セレナーデ」。オーストリア生まれのこの人は確か農家の息子で、中学校の先生をしていた。「水車小屋の娘」「冬の旅」などたくさんの歌曲がある。31歳でこの世を去った。名旋律に乗った歌声は心にしみいる。ヒナステーラの「もの忘れの木のうた」もよかった。この木のそばで眠ると、いやなことを忘れることができるという。アルゼンチンの民話からアレンジしたもである。
吉川郁郎作曲「月の砂漠」聞くのは三度目、なんどきてもいい。どこがいいのかといわれても困る。吉川の優れた感性が叙情豊かに私に訴えてくる。
最後がシュトラウスの「万霊節」。恋人をしのぶ歌。ヨハンの作品はワルツが170曲ポルカ120曲その一つ一つに面白い題名がついている。
「酒・女・歌」「電報」「浮気心」「接吻」「美しき青きドナウ」・・・時間がたつのを忘れてしまった。
ケン アマドは村沢 健一といい、東京芸大声学科出身。その周りにフアンが続々とあつまりはじめた。5月31日と8月31日に同じ安田生命ホールで開く「ケンアマドひとりオペラ」が楽しみである。 |