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愛知県瀬戸市の、猿投山麓にある海上の森は、名古屋市近郊にある最後の広大な里山です。ここは東海地方にしか生息していないシデコブシをはじめとした貴重な生物が見られ、野鳥の種類も多い豊かな自然の宝庫です。現在、21世紀万国博覧会の開催予定地とされ、跡地利用としての都市化計画とともに、この場所の自然環境に影響を与えようとしている問題が起きています。ではどんな所なのか、トピックスなど踏まえてお届けします。(図は図上をクリックすると大きくすることができます) 自然通信(17) 2月27日(土)曇時々晴。ようやく陽射しにも、山にも、少しですが春を感じることが出来ました。この日は春早くに咲き出すマンサクを見に行く目的もあって来ました。探してみると、ありました。ありました。かすかに空に黄色い色の花が映えています。周囲では、エナガとシジュウカラ、コゲラ達の小鳥の群れが飛び廻っています。一羽のシジュウカラが、ひょいとマンサクの枝に止まり、一枚の絵となりましたよ。枝に付いたままの枯れ葉で遊んで見せたりしてくれました。 今日は初めてここを巡った時のコース、物見山のコースを行きます。一番の今回の見物は沢山のツチグリというキノコでした。真ん中のボールのようなものを押すと、埃のような胞子が出てきます。至る所で見掛けることが出来ました。また、てっぺんのオレンジ色の所からそんな名になったのでしょう、クチベニタケというキノコも沢山見つかりました。いづれも図鑑には、夏〜秋に出る、とありますが、なぜか早春のこの頃に出現しています。 山へ向う斜面にさしかかり、歩みもゆっくりになります。地をシダの仲間ヒカゲノカズラが這っています。お寿司屋さんのカウンターで、飾られているのを見た方もいることでしょう。古くは「古事記」にもその名が登場しています。時々休憩し、物見山も登りました。頂上からは、里の様子が見られます。また、海上の森近くにまで迫っている瀬戸の住宅地〜名古屋市街の様子も。この森は生き物の生息地の砦のような状態なのです。 花はまだ少ないのですが、荒れ地に生息するオオバヤシャブシの雄花の芽がふくらみ始めていました。もうすぐニッケイのような香りも出ることでしょう。ヤマハンノキや、サクラバハンノキも赤い紐のような雄花を着けています。ヤブツバキは所々で赤い花々を咲かせていました。3月後半にもなれば、他にも色々な花が見られるのですが、残念ながら今年はもう私は見れなくなりそうです。 雑木林に包まれた道を里へと降りました。民家で、ジョウビタキの雄が、オレンジと黒と銀の頭の姿で愛敬を振りまいてくれます。田んぼでは、先月も見た、イカルの小群が上空を鳴きながら飛びます。どうも越冬していたようです。 帰りに顔なじみの方と出会いました。仕事の合間に森に立ち寄ってみたとのこと。話は、2月24日に出されたアセスメントの準備書についてになりました。開発地に分布する生き物を無理矢理「移植する」方法や、「影響が出ない」という結果付けに対して「なんでねえ。」の言葉が出るばかりです。 一日森を散策した後、主人と私は車に乗り、その日の海上の森を後にしました。これで、ずっとお別れとはなりたくありません。今年に予定されている、新住宅や道路のための造成がされないで済み、、いつもの姿のままの森と生き物たちに今後も会えるようになることを、ひたすら強く望んでいます。どうか、天が海上の森に味方してくれ、保全に向って状況が動いてくれますように・・・。どうか元気でいて!海上の森!! 今後も様々な方面で森を守る運動が行なわれて行くことと思います。関心のある方は下記のリンク先や、諸々の問い合わせ先などをご覧になり、出来ればご協力下さいますようお願いいたします。
トピックス 無謀なボーリング調査に対し、ボーリング施工調査公金支出差し止め訴訟と新たに環境アセス住民監査請求を提出。 11月26日と12月2日に道路建設予定地、及び住宅建設予定地で行なわれる予定の計211本にも登る、地質調査の為のボーリングを差し止める為に、市民団体が愛知県に対し、住民監査請求の意見陳述が行なわれました。これに対し、12月28日、愛知県監査委員は却下の返答を請求者各自宛に書面通達してきました。 この問題点は、もし、予定どおり調査が行なわれるとしたら、今まで繰り返し行なわれてきた地質調査同様、搬入路のための樹木伐採が大量に行なわれ、地下水の噴出を起こすなど自然環境に影響を及ぼす事にあります。また、海上の森に計画されている万博跡地の新住宅や、道路に伴うアセスメント(環境影響調査)はまだ結論が出されていないまま、手続き中です。にも関わらず、必要と思われる以上の調査数は、自然破壊を伴い、あたかも工事着工の準備の様子を示しており、非常に大きな問題です。また、調査依頼の方法のずさんさも問題になっています。 1月26日に、「海上の森を守る住民訴訟の会」は、鈴木愛知県知事等を被告に住民訴訟を提起。(原告41名。)第一回公判は3月上旬に名古屋地裁で行なわれる予定。また、その前日25日には、「国際博・新住事業の環境影響評価調査に関する愛知県知事・関係職員の措置請求書」(住民監査請求。監査請求人108名。)を提出。意見陳述を2月10日午前10時より県庁西庁舎6階で行なう予定。 12月より1月までのボーリング工事のうち、民家の裏山4本については、市民の抗議により、1月26日に中断が決まったそうです。 (以上、「海上の森を守る住民訴訟の会」はがきニュースより) (図の、「ボーリング調査位置図」参照にして下さい。出展は「海上の森の万博やめよう県民会議」の機関誌 緊急増刊号 98年11月27日発行のものから) 新愛知県知事選挙の行方は・・・。 2月7日に、現鈴木愛知県知事に代わる、新しい知事を選ぶ選挙投票が愛知県で行なわれました。今までの県政を引継ぎ、万博や新空港を推進する神田真秋候補に対し、万博を始めとした大型公共事業の見直しを求める影山健候補が健闘。惜しくも敗れましたが、神田氏の票1,353,414に対し、796,361の票数を獲得し、大善戦しました。新知事さんには、この結果を重く受け止めて、前知事の悪政を見直して頂きたいと思います。 アセスメントの準備書発表 2月24日に、海上の森での国際博覧会と、新住宅及び道路の環境影響評価(アセスメント)の準備書が発表されました。開発に対し、「影響は軽微」の表現が相変わらず使われ、貴重な植物の一部は他の場所へ移植するというものです。これについては勿論多くの方が異議を唱えているものと思います。また、環境に影響の出ない他の会場を検討する代替案が出ていないことも問題の一つと言えます。これに対する意見書の提出は
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今まで森で確認された野鳥たちのリストや森の風景などの写真が沢山掲載されています。 今回問題となっているボーリング調査については、「愛知県のずさんな外部委託調査の実態にせまる」のメニューに出ています。「シデコブシ切断事件」については、「万博関連」で写真での詳細報告をご覧ください。(「表紙」からでもアクセスできます。) そして更に、12月12日より、「市民が提案する森を守る万博」という、万博の現計画に代わる、他の開催地も視野に入れた、自然を破壊しない分散型万博(代替案)の内容が掲載されました!海上の森は里山体験ゾーンとして、現状のまま保全するというもの。是非ご覧ください。
1.2.ともお問い合わせ、及び申込先は489-0953 瀬戸市柳ケ坪町98-5 (0561)84-2953まで。 新たな署名活動が始まりました。ご協力お願いします! 日本の伝統的な農業によって維持されてきた里山は、四季折々の変化に富んだ美しい景観を描き、原生自然にはない農耕文化と結びついた独特の生態系が、自然と一体となった文化と心を育み、同時に生物の多様性も保持してきました。 私達は、日本文化の原風景を保つこの里山を、わずか六ヶ月の博覧会や必要性の無いニュータウン構想で潰すのでなく、未来の子供たちや森に住む様々な生き物のため、活用しながら保存する新しい概念の“世界遺産の里山”として登録する事を要望します。 (提出先は環境庁長官宛) 愛知万博から「海上の森」を守るネットワーク
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