1998年(平成10年)10月20日(旬刊)

No.55

銀座一丁目新聞

 

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ゴン太の日記帳 (21)

目黒 ゴン太

 自分は、基本的にアルコール類が苦手である。コップ一杯のビールで、顔は真っ赤に、そして、おでこには、うっすらと血管が浮き上がり、頭痛が始まる。しかし、大学生の酒飲みの会で、コップ一杯ですまされることは、まずない。だから、いつも周りがアルコールがまわって、盛り上がる頃、自分は一人で、つぶれているのが常である。要するに、自分には、酒にまつわるイメージで、全然良い印象がなかったのだ。

 そんな訳で、自らが酒を飲もうとか誘うこともなければ、酒を買うことなど全く無かった。できることなら、避けて生きていきたいと願う程であった。

 しかし、先週、久日振りにできた、丸一日の休みで、ずっと一人で家に居た日があった。そして、その夜、腹が減ったので、コンビニに買い物に行った際、いつもなら通りすぎる棚の中に、缶ビールを見つけた。そして、何故か、毛嫌いしていた筈のそれを、カゴの中に入れてしまったのだ。

 家に帰り、10分ぐらい、その缶とにらみ合っていた。買ってしまった以上、200円がもったいないし、飲むべきだろうが、その後の翌日まで響くやもしれない頭痛、そして何より、一人で飲んで何か意味があるのかなどと考えてしまいなかなか開けられないでいたのだ。

 そして、ついに意を決して、飲んでみるといつものにがいまずさがうそのように、飲みやすく、ゴクゴクいってしまった。別に銘柄が違う訳でもないのになんでだろうと思いながら、いつの間にか飲み干していて、いつものように、顔は真っ赤なのだが、程良い酔いと心地よい気分に包まれていて、一人で暇をもて余していた夜が、本を読んでも、TVを見ても楽しく感じ、幸せな一時を過ごした。

 結論を言うと、酒は、無理強いされたりして飲むべきものじゃなく、自分が、自分で飲む時、飲む量を決めてさえすれば、大変結構な代物であることがわかった。これは、自分にとって、大きな発見であり、その日以降、一人で暇を見つけては、ビール缶で幸せになるようにしている。

 

 

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