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愛知県瀬戸市の、猿投山麓にある海上の森は、名古屋市近郊にある最後の広大な里山です。ここは東海地方にしか生息していないシデコブシをはじめとした貴重な生物が見られ、野鳥の種類も多い豊かな自然の宝庫です。現在、21世紀万国博覧会の開催予定地とされ、跡地利用としての都市化計画とともに、この場所の自然環境に影響を与えようとしている問題が起きています。ではどんな所なのか、トピックスなど踏まえてお届けします。(図は図上をクリックすると大きくすることができます) 自然通信(11) 盛夏もそろそろ終わりに近づいています。8月18日に、サギソウを訪ねに来てみました。他の人からの情報ですと、もう7月26日には開花が始まったそうで、この日は教えて頂いた、辛うじて咲き残っている一花を見ることが出来たのみでした。以前は各地の湿地などに見られたのですが、生息地の減少や、乱獲に会い、今では環境庁のレッドリストでは絶滅危惧2類に指定されています。白鷺に似た花の美しさがもてはやされるこの姿は、人が楽しむためではなく、花粉を媒介する虫たちを引き付けるためのものに違い有りません。なぜそんな姿になったのか確かめるため、そしてサギソウが本来の生き方が出来るためにこそ、自生地の保全が望まれます。 サギソウを訪ねる途中で、沢山のミズギボウシ見られました。東海丘陵要素の植物の一つです。(この地域に多く見られる) この時期には、地中の養分のみで生きる腐生ラン、ツチアケビの真っ赤なソーセージをいっぱい付けたような実も見られます。この日出会った、顔なじみの方と食べてみることになりました。その方の話では、観察会の時に指導員の人に勧められて、一口食べてみたら甘かった、ということでした。が、この日の実は苦い味でした。まずい味ではありませんでしたが。 里に出ると、一匹の蝶が飛んでいくのが見えました。うすオレンジに黒の縁取りが奇麗ですが、実はこれが最近温暖化が原因の一つとなって、分布域を広げているツマグロヒョウモンの雌だったのです。本来は日本では三重県が東限だったのですが、愛知でも確認されはじめ、今年はあちこちで多く目撃されているようです。変化が起こりつつある自然の現れの一つと言えそうです。 8月30日に来た時には、早くも秋の花が見られはじめていました。ワレモコウが咲き、ママコナの群落もあります。ツリガネニンジンの株も出てきました。今度来る時が楽しみです。セミの声も今はツクツクホウシのみとなりました。 四つ沢では、日本で数が減ってきていると言われる、サンショククイが3羽、餌を捜して飛び回っていました。渡り先の越冬地でも無事に過ごして欲しいものです。篠田池では、カイツブリの若鳥がまだ縞模様の残った顔で、現れました。それとは対照的に、道路建設のためと思われる、地質調査用に引かれたレールが森を痛ましく見せていました。所々の斜面では、調査目的のために木が切られた跡も見られます。作業上仕方ないとは思いますが、数十年かけて育った木が切られ、しかもそのため小規模な土砂崩れが生じている場所を見ると、なんともやりきれなくなります。ほぼ毎年このような調査が続けられていますが、一体あとどの位必要なのでしょうか? 夏の終わり頃から秋にかけて、図のような、コナラのまだ青いドングリを付けたままの小枝が道のあちらこちらに落ちているのを目にすることでしょう。誰の仕業かな?実はコナラシギゾウムシやハイイロチョッキリというゾウムシの仲間がドングリに穴を空け、中に卵を産んだ後、枝を切って地面に落としたからなのです。良く、「拾ったドングリから虫がでた。」と言うのはこの虫の幼虫です。ドングリの中身をを食べ、出てきて土の中で蛹になり、冬を越すそうです。 トピックス 今年の海上の森の花暦から異常気象が分かる!?
フジ ガンピ ササユリ サギソウ 地球環境を守るためには、毎日の生活で、エネルギーを無駄に使わないことや、リサイクルに努めることなどライフスタイルの見直しが大事ですが、同時に地域の自然をしっかり守っていくことも欠くべきではありません。森林を構成している植物たちは、温暖化の原因である二酸化炭素の量を調節してくれているのです。森の虫や動物は生態系という一くさりで植物と繋がりを保ち、それゆえに健全な自然環境が維持されています。皆さんは、都会の片隅に緑を増やしたら、気温が低くなったと言う話を聞いたことがありませんか?暑い夏にしのぎやすい森の中で自然観察やバードウオッチングをした後に、住宅街などに出たらアスフアルトの照り返しの暑さに参った経験をされた人もいることと思います。海上の森も、金銭では計れないけれど、私達の暮らしに大きな恩恵を与えていると考えられます。計画されている都市計画化についての公聴会時でも、海上の森を破壊することは、「地球で行なわれている環境破壊に荷担してしまうことになる」との発言をされて人がいました。 他のホームページの案内 こちらのHPもどうぞ・・・。
日本の伝統的な農業によって維持されてきた里山は、四季折々の変化に富んだ美しい景観を描き、原生自然にはない農耕文化と結びついた独特の生態系が、自然と一体となった文化と心を育み、同時に生物の多様性も保持してきました。 私達は、日本文化の原風景を保つこの里山を、わずか六ヶ月の博覧会や必要性の無いニュータウン構想で潰すのでなく、未来の子供たちや森に住む様々な生き物のため、活用しながら保存する新しい概念の“世界遺産の里山”として登録する事を要望します。 (提出先は環境庁長官宛) 愛知万博から「海上の森」を守るネットワーク
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