競馬徒然草(58)
―記録の価値―
6月18日から始まった夏競馬も、9月4日で終わった。この夏競馬で打ち立てられた記録を振り返ってみる。まず、小倉では武豊騎手がアルーリングボイス(牝2歳)で小倉2歳S(GV)に優勝した。この結果、武豊騎手は今年の小倉大賞典、北九州記念、小倉記念に続いて、小倉の全重賞を勝ったことになる。これまで異なる年では岩本市三,河内洋(ともに現調教師)が達成しているが、同一年での小倉重賞完全制覇は史上初の快挙である。
この大記録のかかった小倉2歳Sは重馬場を考慮して逃げの手に出た武豊騎手が後続の追い込みを辛うじてしのいだものだった。幸運にも恵まれたが作戦勝ちともいえる。もし交わされて2着に敗れていたら大記録はならなかったわけで、大記録達成の難しさとその価値の重さを感じさせる。
夏競馬の話題の一つはなんといっても2歳馬のデビューである。その締めくくりとして、西では小倉2歳Sがあり、東では新潟2歳S(GV)が行われたわけであるが、新潟のほうはショウナンタキオン(牡2歳)が圧勝した。それもスタートで出遅れながら,後方から直線から一気に伸びて2着(ニシノフジムスメ)に5馬身差をつけた。1600メートルを1分35秒0(上がり33秒9)という優秀なもの。
そのケタ違いを感じさせる勝ちっぶりに「ディープインパクト級」と表現したしたスポーツ新聞もあったほどだ。ディープインパクトは昨年のダービー馬だが、それに匹敵する強さというわけだ。今に時点ではいささか気の早い評価ではあるが、夏競馬の最後を飾るにふさわしい話題ではあった。今後、記録を打ち立てていく馬に成長していくだろうか。それも秋競馬の見どころの一つである。 (
新倉 弘人) |