2005年(平成17年)5月10日号

No.287

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茶説

脱線事故当日、あなたならどうするか

牧念人 悠々

 JR福知山線尼崎の脱線事故当日JR西日本の職員達がボーリング、ゴルフ、温泉、海外旅行などをしていたというので新聞、テレビが非難する。では、たとえば、天王寺車掌区のボーリング大会にあなたならどうしますか。私なら恐らくボーリング大会に参加したであろう。かっては滅私奉公の精神に燃え、愛社精神も人並み以上であった。昨今はとみに衰えた。自分に与えられた仕事だけこなし、仕事を楽しくやればよいと思うようになっている。上司が指示しなければなにもしない。今の教育は小学校からそのように教え込んでいる。会社自体も効率主義、利益優先主義である。終身雇用より能率主義で、仕事のできる人材を重用する。このような流れの中で大会中止の指示を出した区長がいたら見所のある人物である。JRに限らず多くの企業がこのような状況ではないだろうか。JRだけが特別いびつな企業体質というわけではない。
 JR西日本は脱線事故が起きた先月25日以降、事故の情報を知りながら社員が「不適切な行動」をした事例が18件(参加人員185人)あったと発表した(5月6日)。たとえば、神戸支社ではゴルフコンペで参加者19人。「支社長杯」のコンペで9日間の日程で6日目であった。あとは温泉、韓国、万博旅行などである。JRは馬鹿正直にこのような事例を発表しなくてもよい。ウソを言ってはいけないが、広報の原則の一つに「会社の不利益になることは発表しない」というのがある。事故に関係のない事例をいう必要はない。
 107名の犠牲者を出した事故である。誠に不条理極まる。遺族にとって嘆き、怒りを何処へぶつければよいのか、ぶつけるところがない。JRの対応の悪さはひどすぎた。大惨事にJRはまごまごするばかりであった。やむをえない面があるにしても、上に立つ者は常に最悪に事態に備えて対応を考えておくべきであろう。「戦訓」が沢山ある。1947年2月八高線で買出し列車脱線で184名の死者。1963年11月横須賀線鶴見駅の脱線衝突事故で161人の死者など戦前戦後をふくめて100名以上の死者を出した事故は8件もある。先輩たちがこの事故をどう処理したのか日頃から内部資料を繰り返して読んで頭に入れておく必要がある。歴史の大切さはここにある。事故の教訓は事故を未然に防ぐ安全政策である。それを怠ったところに悲劇が起きた。

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