2005年(平成17年)5月10日号

No.287

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(131)

「『のに』がつくと愚痴になる」

芹澤 かずこ

 早く目覚めたといって娘は6時から庭に出て雑草取りをしている。夜露に湿った土は草が抜き易い。まだ蟻はそう活動をしていないが、ダンゴ虫が眠りを妨げられて迷惑そうにのそのそ移動する。娘に言わせると、死んだ振りをして丸まっていないで、さっさとどいて欲しいものだと。
 連休の初日にあらかた取った筈が、またぞろ出揃っている。常に振り出しに戻るので、なかなか捗らない。除草剤を撒いてはいるが、芝があるのでそう強い液は使えない。おまけに両隣りから種の洗礼を受けているのだからたまったものではない。
 こうした虚しい作業を繰り返していると、庭のない所に引っ越したいと弱気になったり、学生援護会に申込んでアルバイトを募ろうかと思ったり。頭上で鳴いているカラスの声までがアホーアホーと聞こえる。鳴きもせずじっと見下ろされていると、バッタリ倒れるのを待っている禿鷹に見えるという娘。相当に疲れている。
 「あんなにしてやったのに」『のに』がつくとグチが出る」これは、あいだみつをの語録だが、本当に「こんなにせっせせっせと取っているのに」、『のに』がつくとついグチになる。
 時折、疲れた腰を伸ばして家の中へ水分の補給に入る。こんな時に電話でもかかると話し込んで外のことなどすっかり忘れてしまったり、もういいや、なんて怠け心が顔を覗かせるが、ここでひるんでは元の木阿弥とカラ元気を奮い立たせる。それもこれも神の与え賜うた試練やもと敬虔なクリスチャンみたいな気分にもなる。大袈裟と思われるが、これは全くのドキュメンタリー。野原の中のオアシスの如き我が庭をご照覧あれ。



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