2005年(平成17年)5月1日号

No.286

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(46)

―岡部騎手の引退― 

  現役最年長の岡部幸雄騎手(56)が、3月10日をもって現役を引退した。生涯現役を貫こうとした名騎手も、56歳の年齢には勝てなかった。1967年の初騎乗以来、38年間でマークしたJRA通算2943勝は史上最多。岡部騎手は、数々の記録を打ち立てているが、参考までに記してみると、ざっと次のとおりだ。
  最多勝利:2943勝
  最多騎乗回数:1万8646回
  重賞競走最多騎乗回数:1252回
  連続年度重賞競走優勝:28年連続(75〜02年)
  最年長GT優勝:53歳11カ月
    (02年天皇賞・秋シンボリクリスエス)
   騎手としてのあり方としては、今では大半を占め るフリー騎手の先駆者として新風を呼び込んだ。厩舎に所属して自厩舎の馬を優先して騎乗する昔の慣習を打破し、自由な立場でさまざまな厩舎の依頼を受けた。特に有名なのはシンボリルドルフとのコンビで、史上初の7冠達成を成し遂げた。また、オグリキャップ、トウカイテイオー、タイキシャトル、シンボリクリスエスなど、多くの名馬で国内GT31勝、重賞165勝などの記録樹立した。このうちタイキシャトルでは、仏GTジャック・ル・マロワ賞を制して、初の海外GTを制覇している。
   これまで幾度も怪我を乗り越えてきたが、38年間にわたる騎手生活で蓄積した疲労は頂点に達し、体は悲鳴を上げていた。特に寒い日の朝は、身にこたえる。最後の騎乗となった日の最低気温は3・1度。脂肪をそいだ現役最高齢の騎手には過酷な条件が襲った。体力の衰えを気力と騎乗技術で補ってきたが、近年はひざの故障を抱え、毎週リハビリを続けながら週末のレースを迎えていた。かつてライバルとして名を馳せた柴田政人調教師(56)は、10年前の95年、落馬による怪我の後遺症が引き金となって引退している。それを思えば岡部騎手の頑張りには、想像を超えるものがある。
   1回中山の最終レースは岡部騎手引退記念となり、さらにレース後、パドックで引退セレモニーが行なわれた。騎手が作った「みこし」に岡部騎手が乗り、武豊騎手たちが担いで回った。引退後の人生を賑やかに送り出そうというもののようだった。

( 新倉 弘人)

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