2005年(平成17年)3月20日号

No.282

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茶説

サリン事件10年目の教訓
「テロに備えよ」



牧念人 悠々

 オウム真理教の起した「サリン事件」は3月20日で10年を迎える。誰もが予想もしなかったこの事件はさまざな教訓を残している。日本人が一番認識が薄かったのは「テロ」ということである。乗客、駅員等12名が死亡、5500 人以上がサリン中毒症の被害にあった。公判では被害が出なかったが、東京と横浜でワゴン車から炭疸菌を9回にわたってばら撒いている事実が明らかにされている。テロによる治安撹乱を目的としたものであった。それにもかかわらず、テロの認識はなく、オウム真理教を破防法の解散団体に指定しなかった。新興宗教に遠慮したのか究明の余地がある。「アーレフ」と改称後も信者の数は減らず今な1600人を超える実体をどうみるか。警察庁の幹部は国際会議の場で各国の捜査幹部から「オウムはなぜ今も存続しているのか」と度々聞かれるという(3月17日毎日新聞)。当然であろう。アメリカはオウム真理教をテロ団体に指定した。中国の二人の空軍大佐は「超限戦」という論文を発表、サリン事件を取り上げ21世紀の戦争は国境や 様々な限度・限界を超えて起きると予言した。その2年後の2001年にニューヨークで9・11事件が起きた。日本は鈍すぎる。
 当時オウム真理教の「狂気」と立ち向かったマスコミは週刊誌「サンデー毎日」と文化放送だけであった。新聞は「人権」「宗教」に遠慮して真実を追究する迫力に欠けた。テレビの情報番組のだらしなさは目に余るものがある。面白さ、わかりやすさを追究する余りテレビの客観性というのは単に事実と虚偽を同列に置き、善と悪を平等に扱うにすぎないものになっている。従ってテレビはオオウム真理教の宣伝の場となった。その愚を今なお冒している。
 サリン駆除のため自衛隊の科学学校防護班が出動した。サリンがまかれた地下鉄の車内を2回消毒した。万一サリンが残っていてはまた死者を出すことになる。そこで確認のため防護班の一尉の班長が防護手袋を取って素手で車内の床を触った。除毒作業は完全であった。「素手で床をさわる」というのは誰にもできることではない。責任感があって始めてなし得る。このような人物がいるのである。新聞がこのようなことを伝えないのは怠慢というほかない。いまの時代は訳のわからない、考えられない事件が続発する。「治にいて乱を忘れず」の心構えを最も必要とする。

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