2005年(平成17年)2月20日号

No.279

銀座一丁目新聞

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茶説

イラクの民主主義は希望と流血から生まれる



牧念人 悠々

  イラク国民は民主主義作りに明るい希望を持ちつつ苦難に直面している。今年こそイラクに民主主義が根付くかどうかの正念場である。まもなく移行政府が発足する。その後の政治日程は8月15日、議会が憲法草案を起草。10月15日、憲法承認の国民投票。12月15日新憲法下での総選挙。12月31日正式政府発足と重要な節目が次々と重なる。これまで新聞はテロ渦巻く中で選挙の実施は無理などと悲観的なことばかりを伝えてきた。今後の見通しもこれまでと同じく治安悪化、宗派対立、国家分裂の懸念を見出しに出す。その予想は悉く外れた。イラク国民は賢明である。自分たちの生きる道を知っている。平和を求めてやまない。24年間のフセイン独裁体制を生き抜いて51年ぶりの選挙に「投票に行く者は殺す」という脅しにも屈せず845万余人が投票、投票率は58.3パーセント。再生に強い意思を示した。現実に投票所攻撃で33人が殺されている。
 日本人にはこのような経験はない。大東亜戦争の敗戦で米軍に占領された期間は6年7ヶ月である。この間、テロなどで多くの血を流したことはない。新憲法が公布されたのは敗戦1年後の11月。その年の4月には婦人が参政権を得た衆議院議員選挙が行われ、39人の婦人議員誕生した。投票率は女性67パーセント男性78・5パーセントであった。当時、治安は必ずしもよくなく、食糧難で、人心は荒れていた。それでも新生日本再建への希望に燃えていた。イラク人もはじめて自由選挙に参加し、心に明るい灯をともした。「1月30日が自分たちの誕生日」という気持ちがよくわかる。
 自分たちの国を作るのは自分たち自身である。今イラクで起きているテロの犯人はイエメン、シリア、パレスチナその他外国人である。多いのはサウジアラビヤの若者である(ニューズウイーク日本版2・9号)。イラク駐留米軍の防衛にも限度がある。それを補うのは自分たちの新しい国作りの熱意である。どのような困難にも屈しない精神と実行力である。テロが起きる時にはかなず兆候がある。それを地域で力を合わせて摘発、一つづつ丹念につぶしていくほかない。外人部隊を追い出せ。国際協調の世の中、国際社会が統一を目指すイラクに一致協力して援助を惜しまない。歴史は「自ら助ける者」に抜群の力を与える事を教えている。

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