2005年(平成17年)1月1日号

No.274

銀座一丁目新聞

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山と私

(14)
国分 リン

−津軽富士「岩木山」と酸ヶ湯温泉を従えた「八甲田大岳」−

  目覚めたら澄み渡った空の上に美しい姿を見た。津軽の人の心のよりどころ「岩木山」が、黄金色に実った稲穂に裾野を広げている。スポニチ専科コース東北の山シリーズ参加者23人である。

 9月18日(土)晴れ 百沢スキー場の砂利道を歩き出し登山口(200m)に着く。少しずつ色づいてきた雑木林の中の小沢を渡って急登する。ブナの大木があり、どんぐりがたくさん落ちていた。それを踏みながら歩く。上を見たらアケビの実を見つけた。次々実をつけた枝を見つけ、少し紫になり口を開けた実を必死で採り、口にほおばったりして大騒ぎをした。種がたくさんでほろ甘さを味わった。こんなに身近にたくさんのアケビを見たのは始めてである。山葡萄の木を見つけ実は、と探すとあった。小さい実を房に連なり、皆つまみ、味見をする。酸味が強い。これが原種の葡萄の味と教えられた。こんな楽しい山はないねなど賑やかだ。
 蚊取り線香の匂いがした。地元の人が虫除けに腰に下げて歩いていた。東北の山は虫がかなり多く、しまった持ってくればよかったと騒ぐ人もいた。
 通称鼻こぐり(350m)の登りを過ぎ、七曲の急坂を登り緩やかな道になり、展望が開けて姥石(660m)に着く。眼下に弘前の市街地が見渡せた。ここから岩が階段状になった沢を登るようになる。この頃親の介護で時間が取れなくなり、久しぶり参加の先輩Oさんが弱音をはかれた。すぐ尾形先生がサポートで彼女の荷物を持ち、ゆっくり登る事になる。皆心で応援し、託して先へ登る。
 沢の傾斜がまして坊主ころがしのアルミ梯子を登ると、沢音が聞こえ、話し声がする。もう一頑張りで登ると錫杖清水に着いた。喉を鳴らしてごくごくと、このうまさは何にも変えられない。水筒の水を詰め替えた。凄い水量で決して涸れることはないだろう。
 ここからは皆元気になり沢を登りつめたら直径20mほどの種蒔田代に着いた。この辺がここの特産種のミチノクコサクラ(ハクサンコザクラに似ているが全体に大きく、花を多数付ける)の群生地らしい。花の時期にまた登りたいと思った。
 車で登るスカイライン8合目からの道と合流する鳳鳴避難小屋へ着く。大勢の登山者達に驚く。お天気がよく岩木山と奥宮へお参りに来たと地元の人に聞いた。
 ここからは岩場を登り30分程で岩木山頂上(1,625m)へ到着。大きな石がゴロゴロとした30畳位の広さである。360度の展望があり、遠く海が見え、近く八甲田、白神山地、鯵ヶ沢のスキー場等が見え、気分の良い頂である。岩木山神社奥宮へお参りにいく。奥宮の鳥居の前は絶壁になっていて、全て見おろし、見渡し、見守ることのできる立地に信仰の山と確信した。身を清められた気分で頂上を後に鳳鳴小屋へ戻る。
 鳥ノ海噴火口を左にみながら急坂を降り、リフト乗り場を右に折れ、山道を降りると8合目駐車場へ着き、今夜の宿酸ヶ湯温泉へ向かう。
 9月19日(日) 全国に知れ渡っている青森の名湯酸ヶ湯温泉は混浴で白濁の豊富な湯量と効能を誇りにしている。近年の秘湯ブームで広い温泉の中を一部女性用に仕切りが作られた。
 朝から大雨である。今日は八甲田大岳から高田大岳を経て谷地湿原へ下る予定である。3時間出発時間を延ばし、10時に山へ向かう。
ようやく小雨になり、少し明るくなり望みを持って出発。八甲田と
いう山はなく山域の18峰の総称として八甲田山と呼んでいる。但し、一般に八甲田山というときは最高峰の八甲田大岳を指すと教えられた。温泉の向かって右側の鳥居(900m)をくぐるとすぐ山道になり、ブナ林の中雨で水が流れる道を登る。30分位で硫黄臭がしてすぐ地獄湯ノ沢になり、沢を渡る。3度沢を渡り返した頃、雨粒が大きくなり皆慌てて雨具を着け、それぞれに歩き出す。木道がでて仙人岱湿原になり八甲田清水で休憩。こんこんわき出る水は体力回復の源。
 小岳の分岐を過ぎ急坂へ着いた頃から強風と雨にたたかれる。この自然との闘いも登山学校の一部です。との先生方の声が浮かぶ。雨と風との闘いは腰が高いとふらつき、一歩前進するのが大変であった。視界は2m位で荒れた裸地で進入禁止の柵がありロープが張ってある。ロープを頼りに必死で登る。八甲田大岳頂上(1,585m)へ到着。強風と雨の頂上はあまり感激もなく看板の前皆で記念撮影をしただけで下山。コース変更で毛無岱へ向かう為ガレ場を下るが、風の通り道のため飛ばされそうになり、ザックカバーが外れて飛んだ。必死で降り樹林帯に入ると不思議なほどあの強風がない。新しいログハウス風の大岳避難小屋を過ぎトドマツ林を30分歩くと少しずつ明るくなり、草紅葉が始まりかけた雲上のパラダイス上毛無岱へ着いた。木道の上を嬉しくなって飛び跳ねながら歩く。少しずつガスが上がり周りの景色が見え出し緑や赤・黄が色鮮やかだ。時折光が薄雲の間から指し光り輝く様は素晴らしい。木道は西に真っ直ぐに伸びている。上・下毛無岱
の境は急な木の階段になっていて、この上から見る池塘群は素晴らしく何度もみたいと思った。頂上でのあの大変さを忘れさせる景色と自然の変化に夢中でシャッターを押した。休憩所でゆっくり景色を楽しむ。
 木道が西から南へ曲がるとブナの林の中でもう山は見えなくなった。沢を何度も渡り返してひたすら降り、無事酸ヶ湯左側へ到着。一周コースを歩いた。すっかり天候は回復していた。気象の変化で今回はますます深い達成感があった。
 青森出身でスポニチ6期生藤原氏が青森の友人にお願いした素晴らしい奥入瀬渓流グランドホテルへ宿泊。前日は美味しいスルメイカを大量に差し入れしてくださった。東北人の厚い友情に感謝した。
 9月20日(月) 晴れ 早朝散歩に出てたくさんの山栗を広い、吊橋や一足早い紅葉を楽しんだ。
 尾形先生の青森の山仲間がりんごをたくさんお土産に下さった。ありがとうございます。
 奥入瀬渓谷はまだ紅葉には早くひっそりとしていた。印象に残ったのはトリカブトの大きな株と紫に輝く姿であった。
 十和田湖畔から10時間余のバス旅行もカメラード達と楽しい時であった。
 東北の山には毎年一回は挑戦したいと深く胸に刻んだ。

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