2004年(平成16年)10月20日号

No.267

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(30)

―3連単の難しさ― 

  3連単という新種の馬券が登場した。人気にもなっている。それはいいのだが、これを機に投票カードが一新し、種類の増加とともに形式も変わった。そのためファンには戸惑いが多い。競馬場にも多くの専門スタッフが配置されているが、「どの投票カードにどう記入すればいいのか」といった質問が多く、スタッフが対応に追われているほどだ。3連単についていえば、3連単専用の投票カードを覚え(色、体裁)、何枚も記入して、習熟するしかなさそうだ。
 ところで、この3連単を当てるのは難しい。似た馬券としては、従来からの3連複があるが、3連単のほうは、1着から3着までを着順どおりに当てないといけないから、容易に当たらない。その代わり、穴が的中したときの配当は、数百倍から数千倍になることもある。ひと足先に3連単を導入した地方競馬では、100円の馬券が1000万円近い超高額配当になったケースもある。ファンが3連単に、「大きい夢」を賭けようとするわけである。
 夢の大小は別として、ファンは昔から競馬に夢を賭けてきた。そのファンの要望に応えて、時代とともに馬券の種類も増えた。
 昔は勝ち馬を当てる「単勝式」だけの時代もあった。その後、1着から3着までなら当たりとする「複勝式」が登場する。配当は安いが、はずれる危険性が少なくなったため、人気を得る。しかし、「勝ち馬を当てるのが競馬だ」とする単勝派は、今でも存在する。一方、安全性を考える複勝派もいて、まとめ買いをする勝負師型に見られるようだ。
 この種の人は、ある種の「哲学」を持っている。それは、「1日にひとつのレースしか買わない」ということだ。そのレースを当てて配当を手にしたとしても、その金で他のレースの馬券は、絶対に買わない。これが、その人の「勝負哲学」。だから、狙ったレースは確実に取る。そして後は、何事もなかったように、涼しい顔をしている。これは常人にはできる業ではない。
 この話をしたら、「まとまった金がないから、少しの金で高額配当を狙うのさ」という人がいた。こういう競馬ファンが多いようだ。そういうファンの要望に応えて、3連単も登場したわけだが、どんな泣き笑いがあるのだろうか。3連単ファンについて語るのは、もう少し先のことになりそうである。

( 新倉 弘人)

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