2004年(平成16年)9月10日号

No.263

銀座一丁目新聞

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茶説

学校占拠テロ事件に思う


牧念人 悠々

 ロシア南部の北オセチア共和国で武装勢力が学校を占拠するテロ事件が起きた(9月1日)。1200余名の人質をとられて500人を超える死者と多数の負傷者を出した。要求はチェチェン共和国からロシア連邦軍撤退と仲間の釈放であった。
新聞の社説は「どうしてこのような常軌を逸した行動をとるのか。武装勢力の行動に首をかしげざるを得ない」と書く。事前に周到に準備されたその無差別テロは情け容赦なかった。新聞を見る限り人質に加えられた仕打ちは残虐、無残であった。オセチア共和国側はあまりにも無防備であった。内閣が総辞職の事態までになった。
 テロは 9・11 以来新しい型の戦争である。独立を求めてやまないチェチェンの武装グループは国際テロの支援を得て暴走した。新しい型の戦争は場所と時間を選ばず、無差別に不特定多数の人を殺傷する。その昔、テロ犯は目指す相手の側に子供や女性がいた場合襲撃を手控えたといわれる。そのような「武士の情け」を現代のテロ犯は持ち合わせていない。その典型的な例が2001年の9・11同時多発テロである。イラクでは武装勢力がアメリカに協力しているという理由で人質に取っていたネパール人12名を処刑した。今、世界各地でテロが頻発している。テロとは戦うほかない。イラクでは武装集団のゲリラ的テロで治安が悪化している。米軍の戦死者の数は1000名近くになる。
 戦争はそうそう簡単になくならない。冷戦終結後を見ても民族・宗教紛争が絶え間なく起きている。暴力が暴力を生み、悲劇を増大させる。テロの土壌となっている不平等、不公平、差別、貧困、失業を解消する為に努力しなくてはいけないのはわかる。人間の歴史は平和を求め、あごがれ、だまされ、裏切られてきた。日本は敗戦で憲法で不戦を誓い、再軍備を否定した。それから57年、名目はどうあれ、いま、自衛隊はイラクで人道支援と復興のために出動している。現実はテロと戦うアメリカの協力者である。日本もテロの対象に十分なり得ることを知るべきである。

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