2004年(平成16年)7月10日号

No.257

銀座一丁目新聞

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安全地帯(81)

−真木 健策−

果樹園荒らしは大罪である
 

 今年もまた果樹園荒らしが横行している。すでに山梨県ではハウスメロンが盗まれた。防犯カメラに写っていたのは同じ地区に住む40歳台の男で、あえなく御用になった。「知人に配るつもりであった」と言い訳したそうだ。他人が丹青こめて作ったものを横からかっぱらうのはなんとも許せない。根性がいやしい。「食えないから」とか「子供に食わせるものがないから」というのらまだ同情の余地はある。昔であれば死罪である。安土桃山時代では「一銭切り」と言って一文盗んでも一切死罪であった。江戸時代では十両未満の盗みでは死罪ではなかったが、武家の奉公人で主家から2両3分の刀剣を盗んだため死罪になった例がある(南條範夫編「考証江戸事典」)。
 山形県でも収穫期を迎えたサクランボの「佐藤錦」が数回にわたって盗まれている。ここのサクランボは寒河江、天竜、村山地区を中心に全国生産の8割を占める特産品である。複数の犯人が車を乗り付けて盗むのでその被害は大きい。地元では自警団を組織して見回りを強化しているものの被害は後を絶たない。生活が豊かになれば犯罪が減ると思いがちであるがその逆である。「渇しても盗泉の水を飲まず」といったのは昔のことで、いまは欲しいものがあれば、グループであれ個人であれ悪事を重ねる世の中である。ばれなければ何をしてもいいという態度が気に食わない。いまの刑法では窃盗は10年以下の懲役である(235条)。実際の刑はもっと軽い。しかも執行猶予が付く。極刑にしろと言いたいがそれはあまりにも大人気ない。毎年のように果樹園荒らしが増えれば、その罪は重くなってゆくであろう。

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