2004年(平成16年)7月10日号

No.257

銀座一丁目新聞

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山と私

(9)
国分 リン

−自然から元気を貰った鬼無里と飯綱山−

  友の入院を知り、大変ショックを受け落ち込んだ。 山の雑誌を開いたら日本一の水芭蕉の群生地が目に飛び込んだ。尾瀬かなと思ったら一度は訪ねたいと思っていた鬼無里村の奥裾花自然園である。
 鬼無里観光パンフによると鬼無里伝説は平安時代にこの地に京の都から流された紅葉(もみじ)という美しく高貴な女性の話である。

 山とカメラの仲間の車に便乗し、5月中旬夜半車で長野に向かう。
長野ICから国道406号を1.5時間ほど走らせると奥裾花川のほとりの狭い曲がりくねった道の終点に駐車場があった。午前7時頃でまだ車も少なく静かである。ここからはシャトルバスか歩くかで準備をして歩き出した。30分ほどで散策コースが四方八方にあり、水芭蕉を求めて今池湿原コースへ、小学校のグラウンドより広い一面に水芭蕉である。木道に回り込み近くで写真を撮る。ちょっと残念な事に今年は花が10日ぐらい早く咲き、時機が遅くなり白い顎や葉が大きくなりつやと可憐さがない。でもここは樹齢300年から400年のブナやトチの原生林に囲まれていて、道はふかふかの絨毯状態で心地よい。夢中であちこちキョロキョロしながら歩くと、コイワカガミの群落、濃い桃色の花を付けている。膝をつけシャッターを押す。感激しながら歩いたら今度はムラサキヤシヲのピンク地帯だ。胸が高鳴りどうぞこの感動を写してと、シャッターを押す。また少し歩くと始めて見るオオイワカガミを見つけた。名前に負けない大きな花と葉である。色も鮮やかである。充分満足して車へ戻ろうとした。大勢の人たちがシャトルバスで何度も運ばれてきて大賑わいで観光地化している。山ウドを5株採り歩いて車に戻る。
 6時間奥裾花自然園に居て思うことは、子供や孫の代までこの豊かな自然が荒らされないように、願うのみでした。

 車を走らせ一路戸隠へ向かい、撮影スポットの鏡池へ、ここは戸隠連峰の眺望が素晴らしく、またその姿を鏡のように映すことから
名前がつけられた。あの西岳や八方睨みの特異な岩峰たちが素晴らしい。あいにく空模様がおかしく高妻山は雲が湧きあがり望めない。
写真を数枚撮り、ここは朝日が当たるスポットなのであきらめて戸隠植物園へいくが、雷が鳴り出し急いで一回りパラパラと雨がおちてきた。急いで車に戻り今夜の宿の戸隠小屋へ着いた頃には本降りになった。
 翌朝雨も止み、4時にカメラを持ち鏡池へ、ガスもあがり、まるで墨絵の世界でうっとりする。東の方を見ると、雲が何層にもなっている。風で動いて太陽が顔を出す瞬間をじっと待つ。さっと明るくなり少しだけ光をくれた。池に映った山々と湖面を数枚押した。      
 6時過ぎに急に賑やかになった。松戸のカメラクラブ15名の人々でした。皆大判や中判カメラを持ち本格的で、偶然にも4月末の燕山荘で一緒になった人に遭い挨拶した。やっぱりここは素晴らしい撮影スポットなのだと改めて実感した。しばらく待つが山々は雲に覆われ時々姿を見せるだけになり、宿へ戻る。
 これからの行動を宿へ相談すると高妻山は沢を渡渉するので昨夜の凄い雨では止めてくださいとのことで北信五岳の一座飯綱山へ登る事にした。宿の車で登山口のひとつスキー場へ。冬季スキーに3度きたイメージと異なり,人影もなくもの寂しい。ひたすらスキー場を登り、瑪瑙山頂に着くのに1.5時間もかかった。雪のときはリフトやゴンドラで20分程で着く所である。一息入れて飯綱山を目指し、山道に入る。ふっとよくみるとムラサキヤシヲの群落地帯である。残念な事にまだ2部咲きである。でも場所によっては一株全部咲き誇っている。ピンクに染まる中を歩きたかったな。
 尾根に出て周囲を見渡すが、山は皆雲の中である。丁度お昼に飯綱山(1917M)へ着く。東西南北さえぎる物のない展望台であるが、残念だ。頂上の広さは20畳ほどの広さで、適当に岩もあり昼食にする。ゆっくりしていたら子供達が登ってきた。地元の小学校の行事で、60人が班ごとに行動を一緒にしているらしい。視界がよければ子供達ももっと達成感をもち山好きが増え自然に興味を持つ子が増えるのに残念だなと思いつつ、中社への下山を開始した。吊尾根の鞍部を越え南峰の飯綱神社へ病気の友の回復を心よりお願いした。岩ゴロの急坂や、花々が咲く狭い沢道を急いで下り、ふわふわのカラマツの道へ着き、中社の鳥居へついた。あっという間のくだりである。戸隠小屋の好意で車を近くに停車をしておいてくれたので助かった。
 すると大粒の雨が落ちてきた。私たちはラッキーでも、大勢の子供達の事が、皆無事で風邪など引かないように気がかりになった。
 温泉に入り、名物のそばを食べ、元気で幸せな気分で帰る。

 また鬼無里や、鏡池に心を残しながら。

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