2004年(平成16年)2月10日号

No.242

銀座一丁目新聞

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茶説

異常サインを見抜き打開せよ

牧念人 悠々

 親の子供への虐待があとをたたない。人間がだんだん子どもを育てる事の出来ない動物になっていくような気がする。大阪・岸和田で起きた中学3年生の長男(15)の虐待事件にその感を深くする。
新聞を見ていてハッとしたのは、少年を診断した医者河野朗久さんの言葉であった。「特に学校には異常サインを見抜く目をもっていて欲しかった」(2月3日産経新聞)。昔と違って、人権が叫ばれ、差別が厳しく糾弾されるのに、人は身の回りの出来事に意外と無関心、無責任、無作為である。学校では少年の顔色、体重の異常な減り方に早い段階で気がついていた。家庭訪問をして母親から少年と会うのを拒否されてそのまま帰えってきている。何故、不登校の原因を突き止める努力をしなかったのか。あえて言えば、さらに、一歩突き進む勇気が欲しかった。異常のサインに気がつきながら何もしなかった。
 児童相談所についても言える。学校から虐待の恐れがあると通告されながらその裏づけを取る方法を何故とらなかったのか。児童相談所の職員はそんなに無力なのか。周辺で聞き込みをやれば、ある程度の事がわかる。何かに事寄せて家庭訪問すれば事情が明らかになる。一日中張り込みをすればさらによくわかる。東京の足立児童相談所では異常サインに気付き、ドアーのチーエンを切断して母親に虐待されいた小学6年生を救出している。この場合、所長のリーダーシップにおうところが多い。何事につけ万一のときに責任をとる気骨ある人間が少なくなったといえる。
 その家庭に異常が起きておれば、必ず形となって現れる。それが異常サインである。良く観察し、良く話を聴き、物音を聞く。そして体で感じる事ができればいう事がない。
 厚生労働省の調べでは児童虐待で家庭ヘの「立ち入り調査」が全国47都道府県と12指定都市のうち20府県と4指定都市で昨年度一度も行われていないという.とりわけ大阪府の場合、虐待の相談件数は全国一多いが立ち入りはゼロであった(朝日新聞)。さらに児童虐待防止法の改正も検討されているようであるが、学校に、児童相談所に、地域に異常サインを見抜き、虐待防止のために果敢に挑む勇気が無ければ、法律を改正したところで児童虐待を防ぐ事は出来ない。

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