2003年(平成15年)12月1日号

No.235

銀座一丁目新聞

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安全地帯(62)

コロンビアの誘拐、殺害事件が教えるもの

信濃太郎

 南米コロンビアで左翼ゲリラに誘拐された矢崎総業(自動車部品メーカー)の現地合弁会社副社長、村松治夫さん(55)が射殺死体でみつかった(11月25日)。2年9ヶ月ぶりである。むごい仕打ちである。怒りを感じる。日本は国外における日本人の生命の安全に関心を持たなければいけない。朝日新聞は社説で取り上げていた(11月27日)。はじめ村松さんは帰宅途中、警官をまじえたグループに誘拐されたあと、コロンビア革命軍に身柄を5500万円で売られた。革命軍の要求する身代金は28億円といわれたが最後は7億円まで下げられた。革命軍といいながら実体はコカインの密売と誘拐(身代金要求)の犯罪集団である。世の中には中味と実体がそぐわない輩が少なくない。
 コロンビアは面積113万余km、日本の3倍ぐらい。人口は3600万人。ブラジルに次ぐコーヒーの生産国で、地下資源にも恵まれ、エメラルド、金、石油、石炭の埋蔵量が多い。貧富の差が激しく、治安はあまりよくない。進出する外国企業は少なくなく、日系企業も約40社もあるという。
 これまでにコロンビアでは日本人の誘拐事件が1992年1月から2001年2月の村松さんを含めて6件おきている。そのうち5件が半年のうちに解決している(11月26日毎日新聞夕刊)。いずれも身代金を支払っているとみられる。死者が出たのは今回が始めてである。アメカ人の方がはるかにお金持ちなのに、なぜか、日本人が狙われる。その要求にこたえると、相手の「誘拐ビジネス」にまんまとしてやられることになる。現地の日本人に「自衛しろ」といっても限度がある。時と場所を選ばず、急襲するほうが有利なのである。日本人は覚悟するほかあるまい。治安の責任を持つコロンビア政府としても日本とコロンビアの友好と経済発展のために犯罪集団を見逃すわけにはいくまい。断乎としてニセ「革命軍」を一掃して欲しい。

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