2003年(平成15年)12月1日号

No.235

銀座一丁目新聞

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花ある風景(149)

並木 徹

「うたうおかあさん」

  西舘好子さんが「うたうおかあさん」を出した(サンマーク出版・2200円+税)「いっしょにうたえば元気がでる5曲入りCDつき絵本」とある。そのCDでaiweiさんの子守唄を聞く。もの憂げに歌うその声にこの人は母親から子守唄を聞かされていなかったのではないかと思った。私には心にしみた。涙さへ出そうになった。西舘さんは「子守唄に限らず、おかあさんの歌は、子供にとって、たったひとつ、その子のための『心の歌』だとおかあさんに知っていただきたい」と訴える。
 お母さんの歌ならずとも人はそれぞれに「心の歌」を持っている。少年時代を中国の東北部で育った私は小学唱歌「満州育ち」が忘れ難い。「寒い北風吹いたとて/おじけるような子供じゃないよ/満州育ちの私たち・・・」この歌のお蔭で何事にもへこたれない気持ちが形作られていった。
 歌はマジックという。「あなたの歌声は、子どもにとって何よりもホットするものです。聴きながら、笑顔を見せたり、うっとりと眠ってしまったり・・・」子どもたちは母親の歌声でそこやかにすくすくとに成長する。青年になっても歌は人を励まし、感性を育てる。
そういえば、ぬやまひろしの「若者よ」も心の支えになる歌である。「若者よ/体をきたえておけ美しい心が/たくましい体にからくも支えられる日がいつかは来る/その日のために体をきたえてえておけ/若者よ」 多くの若者達が傷つきながらもこの歌に励まされたことだろう。
 この本には昔懐かしい「春の小川」(作、高野辰之)「うみ」(作、林柳波)「紅葉」(作、高野辰之)「雪」(作者不詳)などの童謡が紹介されている。団伊玖磨の「さよなら パイプのけむり」にこんな場面がでてくる。ラジオから「ウミ」が流れてきた。友人の芥川也寸志の眼に涙が溢れた。「いってみたいな、よそのくに」か。うん、外界には自由があるんだな。仕事に戻った僕たちは、二人とも涙でぐしゃぐしゃした顔で雑巾で床を拭くことを続けたとある。二人とも自由という広広した海を思ったのである。歌の不思議な力である。
この本には歌の力を、マジックを、心こめて書いている。おかあさんたちよ 歌をうたおう。

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