2003年(平成15年)3月20日号

No.210

銀座一丁目新聞

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ある教師の独り言(18)

-外国からの転校生−

−水野 ひかり−

 外国から転校生がやってきた。彼は日本語を話せない。そこで週に2回通訳の人が来て日本語の勉強をしたり日頃彼が思っていることや悩んでいる事を話したりする時間を設けた。日本語を話せないだけでなく生活習慣からの違いから大なり小なりのトラブルが起きたが、お互いの国を理解できるチャンスだと話し合った。そんな中で彼が私に「先生Sはどこの中学行くの」と聞いてきた。そこでは地域が二つに分かれていて中学も別々になる。「君と同じ中学だよ」というと「ゲッツ。神様」とオーバーに言った。その後通訳の人から聞いたところによると、SとYは事あるごとに彼のところにやって来ては変な発音の日本語で話しかけ彼を馬鹿にした。彼の国の習慣か彼は香水をつけて学校にやって来た。
 匂いがきついので家庭に事情を話してやめてもらった。始めは「臭い。臭い」と周りの子も騒いだが、彼が止めてからはピタリと言う子がいなくなった。・・・と思った。しかし影でSが言っていたのだ。彼が一人になるのを見計らって、近ずきざま「○○くッさーい。」と囁くのだ。
 私はSとYを呼んできつく叱った。また一人ずつにして行動を振り替えさせた。(Sの感動的発言はそのときYに聞いたのである。)その夜Sの母親から電話があった。Sが家に帰って来てから泣き続けているのだと言う。「先生が受け持たれてから、こういったことが何回もありました。「先生は私を信じてくれたことがない」と言っています。皆の前で泥棒したと言って無理やり謝らせる事もあったそうですね。うちの子を嫌うのは何故なんですか。子供の気持ちを考えない担任って先生が初めてです」と立て続けにしゃべり取りつくしまもない。「電話ではお互いじっくり話せないから学校か自宅で話しませんか」と私が話すと「先生はお口が上手だからごまかされてしまいますから」と言って一方的に切ってしまった。こういう事はめったにないが、相当なダメージを受ける。悔しいしーずるいよな−、自分はいいたい放題だものなー−なんて思ってしまう。−もっとこの保護者と連絡を密にしていれば良かったのかもしれない。−なーんて事も思ってしまう。けれど次ぎの日学校に行ってアレレと思った。同僚に昨日の電話のことを話すと、こんなことを言う人がいた、「Sだろう、俺はもう関わりたくないよ。親だって普通じゃないから何があっても無視、無視で一年間過ごしたよ」Sはずっとこのままなのだろうか。彼女と別れてか何年か経つが今でも彼女はどうしているだろうと思う。人間一面だけでは語れない。私が見つけられなかった良さも沢山あるに違いない。暗く時には狡猾な部分が彼女の成長過程で少しでも無くなってくれればと思う。又Yも人の影に隠れて時々おもしろおかしい体験のおこぼれを期待しながら過ごしているのかと思う。二人にとってより良い方向へ行けるきっかけがおとづれることを期待したい。そのきっかけを自ら期待して新しいクラスに望んでいた少年を知っているからだ。

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