2003年(平成15年)3月20日号

No.210

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(9)

−フェアとアンフェア− 

 サッカーの京都−大分戦で起きた3月8日のトラブルは、大きな波紋を投げかけた。相手の京都に返すべきボールを、大分のロドリゴが奪う非紳士的プレーで勝ち越しゴールを決めた、というのが事の発端。京都側から猛抗議を受けたのは当然だ。そこで今度は、大分が意図的に守備をせず、相手にゴールを許した。京都側からの猛抗議を受けたために、大分の小林監督の指示で同点ゴールをプレゼントしたという。ロドリゴのプレーを、自チームの監督がアンフェアと認めたのだ。問題は、そのときの監督の処置だ。各スポーツ紙は、「故意による失点は、日本サッカー界初の出来事」と報じた。この事件は、この日スタートした新しいサッカーくじ(得点を当てるtotoGOAL)にも影響を及ぼしたため、問題をさらに大きくした。
 事件は一応落着した。だが、釈然としないものが残るのは否めない。後味の悪さを感じたファンも多いだろう。ここで特に指摘したいのは、事の発端となったロドリゴのアンフェアなプレーだ。勝つためには何をしてもいいというものではない。ロドリゴの責任は問われてしかるべきだ。
 他のスポーツでは、アンフェアに対して、どのような処置がなされるのだろうか。ルールや処罰が定められている場合もあるが、必ずしもそうでもないように思われる。考えてみると、競馬などは比較的厳しいようだ。騎手のアンフェアな行為は、処罰の対象とされる。少なくとも戒告か過怠金、さらには降着、失格(騎乗停止を含む)の処分が科せられる。ついでながら、イギリスのミステリー(『本命馬』フランカム&マグレガー)には、騎手の反則行為が描かれている。先頭を切っていた馬の騎手が、内側から並びかけてきた本命馬の首を鞭で殴りつけ、さらに騎手を落馬させる。加害者の騎手が失格になるのは当然だが、こんな荒っぽい行為は今では見られないだろう。むしろ、今の時代感覚からすれば、リアリティーに乏しい。といっても、競馬にアンフェアがないとはいわない。レースで妨害された騎手が、レースを終えてから、相手の騎手を殴った事件があった。アンフェアを咎めたのだ。暴力を肯定はしないが、審判員も見逃すアンフェアのあることを示す事件だった。審議にもならなかったり、審議になってもお咎めなしの場合もあり、納得できずにいるファンの少なくないことも、付け加えておきたい。

(戸明 英一)

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