平成13年の4月20日号に、相田みつをさんの語録を引用して「育てたように子は育つ」を書きましたが、先日、NHKの「クローズアップ現代―赤ちゃんが笑わない−」の放送の中で、初めて「ネグレクト」という言葉を耳にしました。
ネグレクトとは、親が子どもを放ったらかしにして、満足な食事も愛情も与えないという養育の放棄・怠慢を意味するもので、子どもの心身に大きな影響を与えるとして問題になりつつあります。 幼児の虐待の中でも、0歳から2歳のネグレストが41%を占めるといいます。
ネグレクトを受けて育った子どもの特徴は、子どもらしい感情が育たず、無表情で、笑わない、お腹がすいても泣くこともせず、周りとの関わりを持たず大人しく、人と決して目を合わせない、柔らかい筈の体も固く、自閉症にみられる自分を傷つける行為を繰り返す(ベットや壁に頭を打ち付ける)など。
子どもらしい感情が育たず無表情で笑わないのは、あやされたことも抱かれたこともないからで、「抱く」という行為は人間以外の動物でも見られますが、「あやす」というコミュニケーションは人間独特のものとか。生まれたばかりの赤ん坊の、あの新生児微笑と呼ばれるものは、嬉しいから笑うのではなく、親がそれを喜んであやすという行為を促すものなのだそうです。
お腹がすいても泣かず、周りとの関わりを持とうともせず、人と目を合わせないのは、泣くことによって不快なことを外部に発信し、それを受け止めた周囲がケアをしてくれることによって、「自分は守られている」という安心感から人を信頼する感覚が育っていくものが、いくら泣いても何もしてもらえないと判ると、諦めてしまい、生きていても面白くないという、生命に直接繋がって行く機能をも止めてしまうのだとか。
体が固いのも、安心して体を人に預けることが出来ずに、いつも身構えているから抱いても体がしっくりそぐわないのだそうです。乳児院に預けられたこうした子どもたちを、何人かの保母さんが親に代わって熱心に世話をして、抱きしめたり、話しかけたり、笑いかけたりしても捗捗しい改善は見られないようです。ここで預かる期間は2年間で、その間に親の指導もして親元へ返すか、また別の施設へ廻されて行くのだとか。
こういった遣り切れない状況を目の当たりにするにつけ、いっぱしの教育を身に付けた人間などより、子育てのマニュアル本も保育園もない、自然界の動物や生物や鳥類たちの、あの生命を育む営みの方がよっぽど勝っていると思わずにはいられません。
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