2003年(平成15年)3月20日号

No.210

銀座一丁目新聞

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安全地帯(40)

−9・11以来アメリカは戦時内閣だ−

−信濃 太郎−

 ボブ・ウッドワード著「ブッシュの戦争」(訳伏見威蕃・日本経済新聞社刊)を読むと、何故アメリカがイラク戦争を始めたかよくわかる。すべてが2年前の9月11日から始まる。その日フロリダ州サラソタのエマ・ブッカー小学校にいたブッシュ大統領は思いつくままテレビで「わが国に対するテロリズムは打倒されるでしょう」といっている(9月11日午前9時30分)。その夜の国民向けのテレビでは「われわれは、テロ行為をもくろんだものとテロリストをかくまうものを区別しない」と演説している。ブッシュ政権の第一主眼はテロとの戦いなのである。これを見落としてはいけない。
 9・11テロを戦争であると位置付けた大統領と内閣を著者は「戦時内閣」と表現する。私には耳新しく、緊迫感が伝わってくる。テネット(CIA長官)とバビット(CIA工作本部長)はビン・ラディンをアメリカの直面する3大脅威の一つだと説明する。あとの二つは、大量破壊兵器がますます容易に入手できるようになったこと。この中には化学兵器、生物兵器、核兵器、そうした兵器の拡散の懸念がふくまれている。及び軍事面その他における中国の台頭である。
 アメリカにとって湾岸戦争以来、イラクの大量破壊兵器の開発、保有が心配なのである。しかもテログループに渡るのを恐れている。昨年6月、ブッシュ大統領はウェストポイント陸軍士官学校で演説をした。「冷戦時代の抑止政策と封じ込め政策だけではもう十分ではない。これからは脅威が現実になる前に行動する必要が出てくる。先制攻撃をとることのできる態勢がもとめられる」。武力行使について我々はすべての方面に合意を求めるつもりはないというブッシュはこの方針に従っている。現実にその通リに動いている。国連決議も「イラクが査察に全面協力しなければ、深刻な結果を招く」とした「1441国連決議」があればよいとする。
 「この戦いは敵の選んだ日時と条件で開始されました。しかし、我々の選ぶやり方と時間で終わります」というブッシュの決意はきわめて固いようである。

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