2003年(平成15年)2月20日号

No.207

銀座一丁目新聞

ホーム
茶説
追悼録
花ある風景
競馬徒然草
安全地帯
ある教師の独り言
お耳を拝借
GINZA点描
銀座俳句道場
告知板
バックナンバー

競馬徒然草(6)

−ある審判− 

 審判は厳正でなければならない。それは当然のことだが、その審判のあり方に首をかしげることが少なくない。政治の世界に限らない。公正であるべきはずのスポーツの世界でも、往々にして問題を投げかける。
 そんな例の1つが、最近のレースで起きた。2月1日(2回中山初日)の第1レース。2着に入ったガバナーカシマサン(蛯名)の失格事件だ。失格になるケースが少ない上、レース後の審議が20分以上にも及んだという点でも、最近になく審判の問題が注目された。結果は「失格」となってレースは確定したのだが、この問題はこれでは終わらなかった。同馬の高市調教師と騎乗した蛯名騎手から、不服申し立てが提起されたのだ。これに対してJRAの裁定委員会は、その不服申し立てを棄却した。
 この事件は、単純のようでいて、実は複雑だ。改めて整理してみる。@5枠9番コスモアナライザー(金子)が、スタートまもなく落馬した。A同馬は、前の馬に触れて転倒、落馬した。Bその直接触れた前の馬は、責任を問われなかった。Cさらに外側にいた馬が内に寄ってきて、進路を狭くした。最も外側にいた8枠16番ガバナーカシマサン(蛯名)が、「内側に斜行して走行を妨害した」ものと判定された。D同馬は2着に入ったが、「失格」となり、同馬の蛯名騎手は、2月8日から2月23日まで騎乗停止の制裁を受けた。
 ここにいう「制裁」は、一般にいう「処分」で、軽いものには「戒告」、やや重いものには「過怠金」(普通1万円)を科するものなどがある。重い処分には、着順を繰り下げられる「降着」があるが、降着処分になるケースは滅多にない。今回の失格・騎乗停止は、さらに重い処分だ。それだけでも注目されるが、審議に20分以上も費やすという審議の長さも、近頃にはないことだった。審議委員がどのように審議し、処分の結論を導いたか、できるなら知りたいところだ。落馬をめぐる状況が単純でなく複雑だからだ。事実、処分を受けた蛯名騎手と高市調教師は処分に納得せず、不服申し立てを提起した。蛯名騎手の主張はこうだ。「内に斜行はしたが、妨害はしていない。内側にいた3頭にも(落馬の)責任はある」。だが、内側の3頭は処分されず、いちばん外側の馬だけが処分となった。それも「失格」という重い処分だ。それはなぜか。
 判定の仕方と、処分の軽重。それらを含めた審判のあり方については、ふだんから納得し難いものを感じている人は少なくない。審判のあり方は、今後も問われるだろう。

(戸明 英一)

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。(そのさい発行日記述をお忘れなく)
www@hb-arts.co.jp