2003年(平成15年)1月20日号

No.204

銀座一丁目新聞

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ある教師の独り言(13)

-存在感の薄いD先生−

−水野 ひかり−

 D先生は子供に「妖怪」と呼ばれていた。教師仲間でも存在感が薄く、「いてもいなくてもわからない」などといわれていた。いつもぼんやりしていて書類のまとめも間違いだらけであった。受け持つ学年は二年生が多い。クラスがめちゃくちゃになっても、他の学年よりは目立たないかららしい。子供が騒いでもあまり気にした様子が無いが、時々我慢の限界を超えた、といっては、子供を殴った。授業は朝からずっと座ったまま。国語は文の書き取り、算数は計算練習等教科書の絵を写したり、好きな本を読んだりして子供達に一日を過ごさせる。
 ある日連絡帳で「うちの子がどうも友達に意地悪されているらしい―」と訴えてきた保護者がいた。彼はどうしたか。「見ました」の判を押しただけであった。あまりにもひどいとその保護者が校長のところへ話を持っていき、校長が彼を指導した。校長室から戻ってきた彼は一言 「俺にもたれた子は運が悪いんだよな」そして廻りに愛想笑いするようにへらへらした態度をとった。
 何をするにも責任感は皆無に等しい。行事や何かで子供を動かしていかなくてはならないとき、決まって誰かと組む。そしてぼんやりとあらぬ方向を見てなにもしないでいるのであった。
 「あれで年だけ食っているから、給料は俺達よりずっともらっているんだぜ。何もしないで一ヶ月過ごして給料貰えれば、こんないい話はないよな、なに言われたってあいつはやまないぜ」同期の友人はいった。

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