2003年(平成15年)1月1日号

No.202

銀座一丁目新聞

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ある教師の独り言(11)

-Bという教師−

−水野 ひかり−

 昨年に続き先生の話をします。Bという教師に出会ったのは彼女が臨時採用のときだ。若く溌剌とした活発な動きに、私は好感を持っていた。けれど周りの特に並行級を持った人たちの評判が頗る悪い。何故なんだろうと思っているうちにこんな出来事に遭遇した。教職員同士がレクリェーションの時間を持った時のこと。学校対抗で職員がバレーボールを行う事にしていたが、その応援に6年生の男の子がたった一人で来ていた。気ずいた私がその子の担任に「ほら、○君が来ているよ。ここはカッコよいところを担任としてはみせなくっちゃね」といったら、担任は変な顔をしている。その子もばつのわるそうな顔をしている。なんだろうと思っているうちにBが登場した。そして甲高い声で「やだ―○君本当に来てくれたんだ。嬉しい」といって彼れを抱きしめた。彼はドギマギしながらもなんとなく嬉しそうであった。
 彼女は男の子が好きだという。それも背が高くカッコがいい子が好きだという。私が面白い表現をする子が好きだといって何人かを挙げて、この子はこんな時のこんな仕草が面白いとか、子のこの作文を考える時の表情がいいというと、「先生って結構趣味が悪い」と言って笑うのだ。段々と彼女の視点のズレを感じて周りの人たちが彼女をよく思わないこともわかってきた。
 彼女は自分さえよければいいのだった。クラスにカッコいい男の子がいれば最高だが、他のクラスに彼女の対象になる子どもがいればちょかいを出しに行く。そしてこれは彼女の才能なのだろう。担任より彼女の方がずっといいと思わせてしまうのだ。男の子が校庭で体操をしているのを見つけると授業中でも窓から二人だけの約束の合図を送る。二人だけという共通の秘密めいたあまやかな思いに思春期をむかえ始めた少年はうっとりしてしまうのかもしれない。
 小学生の男の子に恋愛感情を持つ女教師はめったにいないと思う。六年生でもまだまだ幼さがあるし、恋愛対象には程遠い存在である。でも彼女は明らかにその気分を楽しんでいた。

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