2003年(平成15年)1月1日号

No.202

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(1)

−年の初めに− 

 こ年が改まると、話題になることの1つは、やはり、今年の「エト(十二支)である。若い世代ほど関心の度合いは低いようだが、一応話題になるところが、いかにも日本の新年らしい。そこで、今年のエトにちなんで、「ひつじ(羊)」のことから書き始める。 
 「美しい」の「美」という漢字には、「羊」が入っているのをご存じだろうか。昔から、羊は美しいものとされていたことを示している。漢字の偏(へん)や旁(つくり)に「羊」が扱われているものは多い。例えば「躾(しつけ)」という漢字の旁(つくり)も、そうである。「躾」とは、辞書には「礼儀・作法を教え込むこと。また、身についた礼儀・作法」とある。「躾」という漢字からも解かるように、本来、それは人が見ても「美しい」と感じられるものである。このように「羊」は、「美」や「躾」だけでなく、「善」にも使われている。争いを好まない、おだやかな羊の性質。それが、人々には「よい(善)」とされたようだ。このほかにも、「羊」は多くの漢字に使われている。ものの本によれば、1800以上もあるという。「関心のある人は調べてみるのも面白いかもしれない。
 羊はアジヤからヨーロッパにかけて広く飼われ、人々の暮らしに役立ってきた。最も重要な財産とされた。牛や豚も家畜として人々の暮らしに役立ってきたが、羊ほどには大事に扱われなかった。それは財産的価値だけではなかった。姿が美しいだけではなく、争いを好まず、おだやかに群れで生活する性質が好まれたようだ。そういえば、「群れ」という漢字にも、

「羊」
が使われている。
 正月らしいことに触れれば、「祥」(めでたいことのしるし)という字にも、「羊」が使われている。「吉祥天」もいらっしゃる。お参りをして、幸せを願う人もいる。不況の世の中。すべてが神頼みというわけにもいかないが、めでたいことを願う人は多い。神社仏閣への参詣は、正月行事に欠かせない。もっと世俗的なご利益を願う人の中には、馬頭観音にお参りする人もいる。捧げる供物は、馬が好物のニンジン。競馬場の近くの馬頭観音を通りかかると、競馬ファンにも信心深い人のいることを知る。そんな信仰心とは別だが、多くの競馬ファンが年初の幸運を願うのは、1月5日の「金杯」。「金杯で乾杯」といけばいいが、平穏には収まらないだろう。波乱の年明けになりそうだ。くれぐれも慎重に。ともあれ、幸運に恵まれることを祈りたい。よい年であって欲しいものだ。世の善男善女のために。

(戸明 英一)

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