2003年(平成15年)1月1日号

No.202

銀座一丁目新聞

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安全地帯(32)

−地雷のあしあと−

−信濃 太郎−

 ボスニア・ヘルツェゴビナの子ども達66枚の画に、こやま峰子さんが詩をつけた本「地雷のあしおと」(小学館刊)がでた。日本の子ども達がまず書かない画である。ドクロが頻繁にでてくる。隻脚の少年も描かれる。
 「戦争が終わり,待ちに待った学校が始まった日、友達に会えることがうれしくて 胸をはずませ 学校につづく道を 足どりもかろやかに いそいだ。おおぜいの友だちが 校門を入ろうとしたとき 地雷が爆発した。
 ぼくのすこし先にいた 5,6人の友達がだれがだれだがわからいほどに 重なりあってたおれていた。
ぼくは土煙をかぶり 地面にすわりこんでしまい、立ちあがることもできない・・・」オリベラ・ツィキッチさん13才の画は校門の近くで7人のこどもが地雷に会った模様が描かれている。3人の友達が倒れ、カバンが散乱している。左すみに大きく赤と黒で塗りつぶされた爆発した地雷は、子ども達をのみこむ悪魔の魔手さながらである。
『真夜中のコンサート』の詩にはこうある。

 「ピアニスト志望の青年は 地雷で遊んでいる子どもたちの姿を ぐうぜん 目にする。あっ あっ アブナイ!!かけより 子どもの手にある凶器をとりあげた瞬間、青年のてのひらで 信じられない猛火とともに 地雷が爆発!青年の耳に 地獄からの鋭い不協和音が 鳴りひびく 煙のなから すすにまみれた子どもたちの あどけない表情がのぞく その日から 青年はピアノがたひけなくなった。・・・」ペナバ・イエルコ5才の画は家のそばで遊ぶ二人の子どもの近くで地雷が爆発する。かばった青年の姿はなく、鳩が描かれている。
 「ジェームズ・ディーンに似た青年は 伏し目がちに 昨夜、ショパンの「革命」を弾いた夢をみたと 話してくれた。 亡き母に贈った 一曲だけの真夜中のコンサートだと ほほえむ」
 ボスニア・ヘルツェゴビナは面積が日本の八分の一くらいの小さな國(面積5万1129平方キロ・人口430万人)である。1992年から95年に掛けて民族独立を巡って内戦が起きた。内戦中全土に埋められた地雷が今な人々を苦しめている。まだ75万から100万個の地雷が残っている。これを取り除くのに後10年もかかるといわれる。戦争は常に弱者に犠牲を強いる。人類はそれでも懲りずに戦争をはじめる。
 まことに愚かしい.じっくりと子ども達の画を見て欲しい。

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