2002年(平成14年)12月1日号

No.199

銀座一丁目新聞

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安全地帯(29)

−懐かしいふるさとの味−

−真木 健策−

 毎年、師走になるとスーパーなどに好きな干し柿が出廻るのを楽しみにしている。長野県飯田市やその近辺の下伊那郡地方の農家が生産されるものを昔から名の通っている市田柿として売られているものだ。
農家の風通しのいい軒下や納屋につるされた柿のカーテンは晩秋の風物詩だ。その柿(渋柿)も傷つけないように一つ一つ木から取り、皮をむき、燻蒸、そしてつるし、選別、程良く白い粉が吹いた粒のそろったものをパック詰めにして出荷する。
 一家総出の夜なべの作業である。労力と手間が掛かる。山間地や零細農家のささやかな収入源である。
パックには生産者の住所、氏名入りだから消費者に取っては安心して食べられる。ふるさとの懐かしい味がする。氏名が入った知り合いに「スーパーでいっぱい売られ評判がいいようだよ」と電話すると「嬉しい。ありがとう」と大喜び。生産者は作りがいがあるというもの。
 野菜にしても「私が作りました」と本人の写真、氏名、産地入りのものが売られている。牛肉や鶏肉の産地偽装、賞味期限表示の偽装工作、使用禁止の農薬を使って作った野菜など、なにおかいわんやである。結局、損するのは、それに携わった企業、農家である。
 生鮮食料品の多くには産地名が記されているが、偽りのないことを望む。大阪、千葉、熊本の女性知事が輸入食品の検疫強化を小泉首相に提言したのも食の安全、安心確保のためである。  

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