競馬徒然草(30)
−暗い話題−
前回に続いて、今年1年を振り返ってみたい。なるべく明るい話題を取り上げたいのだが、時節柄、なかなかそうもいかない。まず、名門として知られた早田牧場の破産。早田牧場といえば、94年の3冠馬ナリタブライアンなど多くのGT馬を生産した名門牧場である。関連3社が自己破産を申請し、11月25日、札幌地裁から破産宣告を受けた。負債総額は約58億円。
ところで、馬たちはどうなるのだろうか。まず、大種牡馬ナリタブライアン(牡17歳)の動向。同牧場の種牡馬部門「CBスタッド」で種牡馬生活を送っていたが、ここを離れて北海道静内のアロースタッドで種牡馬生活を続けることになったという。今年のダービー馬タニノギムレットを出すなど、エース的存在であることを思えば、まずは安堵というところだろう。 だが、世の中の不景気を考えれば、牧場の破産は今後も出てくるかもしれない。そんな予感もするのだが、果たしてどうだろうか。
暗いニュースでは、JRA(日本中央競馬会)の元幹部が収賄容疑で逮捕される事件もあった。京都競馬場の場長時代に、年間無料入場券「パスポートカード」事業の決裁権限を持っていたことから、カード会社社長から現金を受け取っていた。その後、場外馬券売り場に絡む不正もあったというから、事件の全容が明らかになるのは、まだ先のことだろう。それにしても、10年も前の不正が、なぜ今まで事件にならなかったのだろうか。不審に思う人も多いだろう。このほかにも、明るみに出てこない不正がまだあるかもしれない。そう思われてもやむを得ないものがある。
JRAは、「公正」をモットーとしている。それが内部で無視されているとすれば、言い訳もできない。レースだけは「公正」だと思いたいが、それすら疑いの眼で見られることになりかねない。明らかに「疑い」とまではいわなくても、「納得しかねる」ことは少なくない。例えば、レースにおける「審議」というのも、その1つだろう。レース後に、「審議」とアナウンスされるケースは少なくない。レース中に進路妨害などで不利を受けた馬がいた場合など、一応は「審議」となるのだが、殆どが、「進路妨害とは認められないので」というアナウンスで済まされてしまう。レースをスクリーンで見ている限り、妨害などの不利を与えたと思われるケースでもそうである。馬券を買っているファンにとって、そんなアナウンスだけで納得できる訳がない。パトロールフィルムでも見せて、詳しく説明する必要がある。そもそも、進路妨害の基準が、ファンにはよく知らされていない。失格や降着の判定基準についても同様である。加害と被害の判定の裏に、該当馬の関係者への思惑が働くことはないだろうか。まさかとは思うが、そのような眼で見ているファンもいるのである。もし、そのようなことがあったら、大事件である。
明らかに事件になっていないことまで、話題として書いた。明るくない話題ばかりだが、今度は明るい話題を取り上げたいものだ。新しい年には、どんな話題が待っているだろうか。 (宇曾裕三) |