2002年(平成14年)11月1日号

No.196

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(27)

−「情報」について考える− 

 前回、「人気」と「無印」について書き、「無印、軽視すべからず」の格言を述べた。ところが、その直後に、符節を合わせるかのように、競馬の菊花賞が格言の正しさを証明してみせた。人気馬が総崩れで、大波乱となったのだ。優勝馬ヒシミラクルが10番人気、2着ファストタテヤマが16番人気。馬連は9万6070円の配当がつき、クラシックレース史上最高の配当となった。7月に導入された新馬券の馬連単は18万2540円、3連複は34万4630円で、GTレースで最高配当になった。
なぜ、このような波乱の結果となったのか。結論からいえば、人気馬が期待されたほどの力を発揮できなかったからだが、人気になるほどの力がなかったといえる。3歳馬にとって、3000メートルという長距離のレースは未経験。2000メートルや2400メートルの中距離では好走した馬も、3000メートルとなると、力を発揮できるとは限らない。延びる600〜1000メートルをこなせるだけのスタミナが問われる。これまでの中距離での実績だけでは評価できないものがある。ところが、中距離の実績だけが重視され、それが人気を形成した。その人気には、長距離適性というファクターが軽視されていた。そこに多くのファンがレースを考える上での盲点があった。この点は、情報を提供する新聞などのマスコミにもいえる。情報の量は多いが、肝心の情報が少なかったといえそうである。
今は情報時代で、大量の情報が提供されている。だが、必ずしも正確な情報とはいえないものもある。また、知りたい情報が得られないということも少なくない。なかには事実を公表せず、隠そうとすることも多く、さまざまな事件が発生している。あえて事例を挙げるまでもないだろう。人が求めるのは、正しく、かつ知りたい情報である。
人は情報を求める。携帯電話を例にとっても、その普及ぶりが如実に示している。だが、その利便性のために、携帯電話による問題も発生している。いささか話はそれるかもしれないが、情報のやりとりという点で触れることにしたい。地方競馬でのことだが、厩舎から得た馬の情報を、依頼を受けた人物に携帯電話で流していた事件があった。依頼者から金を受け取り、調教師や厩務員に謝礼を渡していたもので、携帯電話のやりとりから発覚した。ついでに海の向こうの話だが、英国の競馬界では、特に騎手の携帯電話使用に頭を痛めているという。競馬場から競馬場へと移動の多い英国では、携帯電話の使用もやむを得ないものがある。だが、仮に不正な情報の送受信に使われたとしても、事実が把握できず、処置の講じようがないのである。
競馬の世界では、レースの公正を期するため、騎手はもちろんだが、厩舎関係者は外部の、特にいかがわしい人物との接触を禁じている。だが、ときとして、先に触れた地方競馬の事件のようなことが起こり得る。携帯電話使用による不正は、今後も発生しないとは限らない。携帯電話ではないが、馬に発信機を装着した事件もあった。情報産業の発展とともに、情報機器も高度になりつつある。「情報」の問題は、さまざまなことを考えさせる。

(宇曾裕三)

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