このところ内部告発がさかんである。喜ばしい現象である一面、悲しむべき世相でもある。それだけ企業の不祥事が相次いでいることを意味する。昨今は隠れたところで悪い事をする人間が増えたようである。ばれなければ何をしてもいいといわんばかりである。人目のつかないところほど善行をせよ古人はいった。
とりわけ、原子力発電所の事故隠しは重大な事故を起こしかねないので、見逃せない。重大事故は、それが起きるまでに小さい事故が200も300もおきているのが常である。小さい事故を調べ、処理方法を考え、対策をきちんと立てておれば、大きな事故を未然に防ぐ事ができる。これは世界で起きた多くの大事故の教訓である。
昔話をする。昭和51年2月ロッキード事件が起きた。この事件は構造汚職である。「政策決定の見返りとして政治献金あるいは賄賂が政治家へ密室の中で行われる」。関係者が口を閉ざしてしまえば、事件は闇から闇へ葬られてしまう。そこで「内部告発者よ、いでよ」の連載をした(昭和51年3月)。事件の真相を知る者はまず、東京地検に資料を提供してくれ、毎日新聞だけでなく他紙にも連絡してくれと訴えた。今から26年前だが、効果はあった。日本人はもともと正義感があり、不正を憎む気持ちがつよい。
消費者運動の旗手、ラルフ・ネイダー(来日した事もある)は「公害運動をすすめるためには企業の中に企業内告発者、ホイッスル・ブロワーが必要である」といった。世の中の不正を直すためには時には「笛を吹く人」がいる。これまでの一連の企業の不祥事の殆どは内部告発によるものである。企業の規律が緩んできた昨今、ますます内部告発が必要となる。企業も目安箱を設けたり、内部告発をしやすい環境づくりをしたり努力を始めている。
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