NHKの「地球に好奇心」という番組でバルセロナ1000キロ鳩レースに賭けるベルギーの男性たちの凄まじいまでの取り組みを見た。
中でも、祖父の代にこのレースで2回も優勝したという或る飼い主は、何世代も良い成績を残している血統つきの鳩を、そのレースに参加させることだけを目的に何百羽も飼育して、その中から更に選りすぐった鳩を数十羽レースに参加させる。昨年20位以内に食い込んだので、今年は優勝を狙っている。優秀な鳩は立派な目をし、翼はしなやかで、羽毛は光沢があり、筋肉もしなやかなのだとか。毎日、鳩舎の上空を何回も旋回させて飛行の訓練をしている。大きく羽ばたき群れから離れることを恐れない鳩がレースに向いているという。
各地からこのレースに参加するために、専用の貨車に積まれて運ばれてきた27,000羽の鳩が一斉にバルセロナを飛び立つ。ピレネー山脈を越え、フランスのローヌ川を渡り、1000キロを20数時間かけて自分の巣箱へ向かう。戻ってきたときの体重は半減しているという。それだけ過酷なレースなのだ。そのための十分な体力作りに、飼い主は餌もいろいろと工夫し、その日の糞までもよく見る。糞の上に羽毛がついているのがいいらしい。羽毛が抜けかえるということは、新陳代謝がよくコンデションが上向いている証拠なのだそうだ。
バルセロナを飛び立った鳩が、一刻も早く鳩舎に戻るよう、その帰巣本能を刺激するために、鳩の夫婦愛をも利用する。レースの前に数日間引き離しておいて、出発の朝に会わせて二羽で十分に飛行させ、またオスとメスを引き離し、出発の寸前に一目だけ会わせてメスの元に早く帰りたいという気持ちをオスに起こさせる。また、雛から引き離して母性愛を掻き立てるという方法を取る飼い主さえもいる。
この、鳩の帰巣本能は地磁気に関係があるらしいが、それでも毎年、迷い鳩が多く出る。また高い建物に激突したり、電線に触れて怪我をしたり、猛禽に襲われる鳩も多いらしい。
20数時間ということは一昼夜であるが、鳩は夜は飛行しないので森などの木で休み、また朝に一斉に飛び立つ。帰ってくる朝、飼い主は5時から鳩舎の窓を開けて空を見上げている。予定の7時が過ぎても一羽も戻って来ない。9時過ぎ、ようやく何羽かのご帰還。でも上空を旋回していて中に入らない。自分の巣箱に入らなければゴールにはならない。やっと一羽が入る。タイムレコーダーを押し、その記録を足につける。参加をした鳩にはそれぞれコンピューターに登録された番号があり、飛距離と時間で順位がつけられる。
今年は思いもよらぬドイツ勢に優勝をさらわれ、ベルリン勢は完敗。でも、くじけている暇はない。もう来年のレースに向けて別部隊の訓練がとうに始まっている。
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